おはこんばんにちは。きゅうべいです。皆さん年の瀬をいかがお過ごしでしょうか? 相変わらず日経は年末19,000円台をキープしており、買うのも売るのも入りづらい微妙な感じで揉んでおります(笑)。
さて、「株式投資の基本」シリーズの第6回目は「JDR(日本預託証券)」です。もはや基本なのかどうか怪しいですが(笑)、しかし投資経験の無い方がNISAを使う際にとても重要になります。まずはこの「JDR」の仕組みをさらっとご紹介して参りましょう。
JDRとは?
JDRは「Japanese Depositary Receipt」の略称であり、「日本版預託証券」と訳されます。これはなにかと言いますと、早い話が「別の株式市場で売られている商品の”引換券”を上場する」ということです。
正確には、海外の証券取引所(※主にニューヨーク証券取引所)に既に上場されて実績のあるETF(※注)を、日本の証券会社が受託者(=卸問屋)となって間接的に日本市場へ簡易的に上場する仕組みです。つまり、ある証券会社がニューヨーク証券取引所で実際にETFをまとめて買い付けてきて、それを担保とした代替証券=引換券を日本市場に上場するんですね。こう書くとなんかロンダリングみたいですが(笑)、世界的に流行している手法です。このやり方を使うと、海外ETFなのに、東証で円建てで買えるようになります。これはものすごく手軽で画期的な制度です。
※注 ETF以外に個別株も可能ですが2016年現在はありません
JDRのメリット
JDRには多くのメリットがあります。ざっと上げてみますと、、、
- 海外ETFが円建てで買える
- 日本株手数料で気軽に買える
- 国内産ETFより圧倒的に大きな規模の世界標準ETFが買える
- 為替差益を考えなくてよいため、確定申告が楽ちん
いいことづくめです(笑)。まずいちばんは、買うのも売るのも「円建て」で出来て、しかも手数料では「国内株」扱いしてもらえることです。
海外ETFの売買は国内株よりも高い手数料が取られます。安いマネックスやSBI証券でさえ約定代金の0.45%を取られます。(※ただし最低手数料は5米ドル。手数料上限は20米ドル。2016年12月時点。)これがあるせいで、一回の取引で30万円分くらいは売買しないと、海外株は手数料負けしてしまいます。ところがJDRならそんな事はありません。あくまで扱いは国内株なので、数百円で取引ができます。
また、海外株で厄介な「為替差益」の税処理からも開放されます。JDR銘柄の値段自体には為替が織り込まれていますが、あくまでも売り買いは円建てですから、ユーザーからするとそこに為替差益は発生しません。
さらにさらに、JDR銘柄は世界規模で超有名なETFがズラッと並んでいます。例えばスパイダーの愛称で知られる「SPDR S&P 500 (1557)」は2016年12月27日現在の純資産残高が26兆円(=2260億ドル)もあります。国家予算か!という(笑)。これだけ大きなファンドですから安定度は抜群です。トラッキングエラーも早期償還も心配には及びません。こういった世界規模のETFが国内で気軽に買えるのはとても魅力的です。素晴らしい。逆に言うと、国内のETF業者にとってはまさに「黒船来航」なわけで、一層の手数料競争と販売戦略熟考が求められます。ユーザーにとっては良いことづくめです。
JDRのデメリット
こんな最高に素敵なJDRですが、注意しなければいけない点が2つほどあります。
ひとつは、JDRはあくまでも中身は海外ETFである点です。このため、配当・分配金には「海外課税」と「国内課税」の両方がかかります。アメリカであれば課税は10%です。純内国産のインデックスETFとJDRで日本に来たインデックスETFでは、同じ指数に連動していてもこの分だけ手取りの配当金が減ってしまいます。確定申告で外国税控除を受けられますが結構面倒です。もっとも、ETFの信託報酬はJDRの方が低いことが多いので、税控除を受けなくても最終的なリターンは同じかJDRの方が良いことが多々あります。
また、JDR銘柄はあくまでも受託者(卸問屋)を経由した商品であるため、分配金に比例配分方式がつかえないものがあります。その場合、分配金は受託者経由となり、証券口座ではなく銀行口座でユーザーに支払われます。この時NISA口座の配当・分配金免税の対象となりません。NISA口座でETFを買うときには、かならずその銘柄が純国内産かJDRかに気をつける必要があります。これが意外と罠です。NISAで買う場合には、日本市場にあるJDRではなくその大元の海外ETFを外国株口座でNISA買いした方が良いです。幸い、SBI証券ならNISAでの海外ETF買い付けが無料なので、JDRではなく海外ETFを買う方が圧倒的に有利です。
JDR一覧 (2016.12.29)
それでは東証にある実際のJDR銘柄を見ていきましょう。これ以外にも香港のハンセン指数に連動するようなものもありますが、無配当銘柄なので無視してます。無配当銘柄は純国内産もJDRも全く違いがありません。
アメリカ市場の銘柄
コード | 名称 | 対象指数 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
1557 | SPDR S&P500 | S&P500 | 0.10206% |
1546 | NYダウ30投信 | ダウ工業株30種 | 0.486% |
1393 | UBS米国株 | MSCI米国株インデックス | 0.1512% |
1587 | iシェアーズ米国超大型株 | S&P100 | 0.216% |
1588 | iシェアーズ米国小型株> | ラッセル2000 | 0.216% |
1589 | iシェアーズ米国高配当株 | モーニングスター配当フォーカス | 0.0864% |
ヨーロッパ株の銘柄
コード | 名称 | 対象指数 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
1385 | UBSユーロ圏株50 | ユーロストックス50 | 0.162% |
1386 | UBS欧州株 | MSCI ヨーロッパ | 0.216% |
1387 | UBS欧州通貨圏株 | MSCI EMU | 0.1944% |
1388 | UBS欧州通貨圏小型株 | MSCI EMU小型株 | 0.3564% |
1389 | UBS英国大型100 | FTSE 100 | 0.216% |
1392 | UBS英国株 | MSCI 英国 | 0.216% |
1312 | UBSスイス株 | MSCI スイス20/35 | 0.216% |
その他・世界株の銘柄
コード | 名称 | 対象指数 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
1581 | iシェアーズ 先進国株 | MSCI コクサイ | 0.27% |
1582 | iシェアーズ エマージング株 | MSCI エマージングIMI | 0.1512% |
1583 | iシェアーズ フロンティア株 | MSCI フロンティア100 | 0.8532% |
1394 | UBS先進国株 | MSCI ワールド | 0.324% |
1390 | UBSアジア太平洋株 | MSCI パシフィック(除く日本) | 0.324% |
外国国債の銘柄
コード | 名称 | 対象指数 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
1361 | iシェアーズ 米ハイイールド債 | MiB リキッドHYキャップド | 0.54% |
1362 | iシェアーズ 新興国債券 | バークレイズ 自国通貨建てコア国債 | 0.54% |
1363 | iシェアーズ 米国債 | ICE米国国債7-10年指数 | 0.216% |
不動産
コード | 名称 | 対象指数 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
1590 | iシェアーズ 米国リート | ダウ・ジョーンズ米国不動産 | 0.4644% |
ブラックロックの提供するiシェアーズETFのうち、上記JDRだった10銘柄は2018年1月22日付けで上場廃止となります。
代わりにJDRではない日本のETFとして代替商品が出ました。外国税(二重課税)や為替スプレッドを気にする必要がなくなるのでユーザーの利便性は上がるんですが、しかし長期投資ツールであるETFを償還されると厳しいですね、、、。個人的には「1582 iシェアーズ エマージング株」を新興国株クラスの主力で使っていたので、この件の強制乗り換えで譲渡税を払わされました。