証券口座の種類:一般口座と特定口座~株式投資の基本(4-1)

​さてさて、「株式投資の基本」シリーズ第4弾です。

前回までは株式、ETF、REITと商品の種類について書いてきましたが、今回は証券口座の種類についてです。証券会社にいはいろいろな口座があります。海外証券用の口座であったり、FXの口座であったり、はたまた投資信託用の口座であったり。今回は日本の証券取引所に上場されている商品を買う際の主な口座3つについて比較・解説していきたいと思います。

長くなりすぎたので、NISAについてはこちらの後編で考察しています(笑)。

まずはざっくり比較

細かい所に行く前に、まずは違いをざっくりと見てしまいましょう。

一般口座 特定口座 NISA
投資額 自由 自由 年間120万円まで
投資履歴 自力でメモ 年間取引報告書をくれる 年間取引報告書をくれる
税金 自動徴収なし 源泉徴収の有無を選べる 税金自体が免除
確定申告 必要 必要/不要が選べる 不要

さて、証券会社で口座を開く際には、まずは「一般口座」「特定口座」の2つから選ぶことになります。一般口座と特定口座の一番の違いは「年間取引報告書」を証券会社が作ってくれるかどうかです。

「年間取引報告書」は、カレンダーイヤー(1月~12月)であなたがどれくらい儲かったか/損したかの収支を書いた、証券会社の押印付きの紙です。日本人の義務として、皆さんは必ず税金を収めなければなりません。株式・ETF・REITといった商品の場合には、年に数回もらえる配当や分配金にかかる「配当税」と、安く買って高く売った時に儲けた差額に対してかかる「譲渡益税」の二種類がかかります。「配当税」については皆さんのお給料と同じく貰う時にあらかじめ税金が天引きされています。一方の「譲渡益税」については、皆さんは確定申告をしないといけません。その際に税務署へ申告書と一緒に提出しないといけないのがこの「年間取引報告書」です。ですから、基本的には作成しないといけないものであり、一般口座だと自分で作り、特定口座だと証券会社が作ってくれます。基本的に一般口座をわざわざ選ぶメリットはないと思って下さい。単に昔は「一般口座」しかなくてそれが当たり前だったので、その名残でいまも選べるというぐらいの認識で大丈夫です。

では次に、特定口座の中でのオプションについてです。特定口座では多くの証券会社で「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」が選べます。この「源泉徴収あり」を選ぶと、譲渡益税についても源泉徴収(天引き)してくれるようになり、確定申告をしなくてもよくなります。ですから、特にこだわりが無いようであれば、「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶのが一般的です。ただし資産運用に厳密な効率を求める場合は「特定口座(源泉徴収なし)」の方が有利であり、投資マニアや専業のデイトレーダーなどはわざわざ「特定口座(源泉徴収なし)」を選びます。

特定口座における源泉徴収のメリット・デメリット

特定口座で「源泉徴収あり」を選ぶ一番のメリットは「確定申告をしなくても良くなるから面倒くさくない」ことです。というかコレが全てです。「特定口座(源泉徴収あり)」では、株式を売ると、勝手に儲けを計算して税金を取っていってくれます。また「今年儲けが出ている状態」で「別の含み損の株を売る」と、「今年出ていた儲け」に「今日確定した損」を合算して、減った儲けの分で払いすぎている税金を返してくれます。とっても楽ちんです。

ところが日本の税制では、実は「税金を払わないでも見逃してもらえる」特別ケースがいくつかあります。このようなケースにもし当てはまったとしても、「特定口座(源泉徴収あり)」にしておくと税金をもっていかれます。そのため、極めて稀なケースですが、源泉徴収ありだと儲けが減るパターンがあります。

年間雑所得が20万円以下の場合は所得税を見逃してくれる

日本の税制では、あなたが一年間で得た全ての「収入」を以下のカテゴリへ分けます。

利子所得 貯金や国債の利子
配当所得 株や投資信託の配当/分配金
不動産所得 不動産(家や土地)を貸した時の儲け
事業所得 自営業の人の儲け/ アフィリエイトとかもここ
給与所得 お給料の儲け
退職所得 退職金をもらった時。実は確定拠出年金を60歳で貰うと時もここ。
山林所得 5年以上もっている山や森を売った時の儲け。
譲渡所得 株券を含めた「金券」を売った時の儲け。プレミアムがついた昔のCDを売った時の儲けもここです。転売ヤーみたいに普段からしょっちゅうやっている人は「事業所得」扱いになります。
一時所得 たまたまラッキーでもらったお金。デパートのガラポンであたった「純金のノムさん像」はここです。
雑所得 その他。

参考:国税庁のHP No.1300 「所得の区分のあらまし」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1300.htm

このうち、いわゆる「その他」にあたる「雑所得」が20万円以下で、かつ、「その雑所得以外に確定申告をする用事が無い場合」にだけ、特別に確定申告をしなくても見逃してもらえます。この「雑所得」というカテゴリは結構便利です。株で儲けた場合は本当なら「譲渡所得」なんですが、「雑所得」扱いでも良いことになってます。そのため、これが20万以下の場合は税金を払わなくてもよくなります。

よく勘違いされることが多いのですが、あくまでも「その雑所得以外に確定申告をする用事が無い場合」に「見逃してくれる」のがこの制度です。例えば家を買って住宅ローン減税を受けたいときには「他に確定申告をする用事がある」場合ですので、例え雑所得が20万円以下でも申告しないと虚偽申告の脱税でお縄になります。また、例えばあなたが超レアな芸能人のサイン色紙を持っていてそれをヤフオクなどで超プレミアム価格で売った場合、その収入も雑所得になります。そうすると、その収入と株の収入も足さないといけません。あくまでも全ての「雑所得」のトータルが20万円以下のときだけ見逃してもらえます。

また、見逃してもらえるのはあくまでも所得税だけなので、住民税は払わないといけません。確定申告は国の税金なので地元の税務署に行きますが、住民税は地方自治体の税金なので市役所・区役所です。「20万円以下だからなにもしなくてもOK」ではないので、気をつけましょう。

結論としては、「源泉徴収あり」にしておいたほうが無難です。

資産運用のパフォーマンスは「源泉徴収なし」の方が有利

面倒くさいばっかりでメリットがなさそうな「源泉徴収なし」ですが、最大にして最重要なメリットが一つだけあります。それは、「一年分の税金は、まとめて翌年3月に払えばいい」という点です。投資の世界において、時は金なりです。タイム・イズ・マネーです。

例えば、あなたが今年株で100万円儲かったとしましょう。源泉徴収ありの場合、儲けを確定するたびにその都度税金が引かれ、なんだかんだ20万3150円を持っていかれます。その代わりあなたは確定申告をする必要がなくなります。

一方源泉徴収なしの場合、あなたは面倒くさい確定申告を2月中旬~3月中旬までに行い、税金を一括で払わないといけません。しかし、払うべき税金が手元からなくなるのは、あくまでも確定申告が終わったときです。そうすると、あなたは「利益が確定した瞬間から確定申告を終える時まで」の間、払うべき税金を運用することができます。最長でも1年ちょいですが、例えば上記の税金20万3150円を運用して2%のリターンを獲れば、4063円分あなたは得をします。

たかが4000円と侮るなかれ。もしあなたが1,000万円分の株を運用していれば、この税金が50万~100万になることがザラにあります。100万円の税金をいま取られるか、半年後に取られるかでは、当然運用成績も変わってきます。これを「税金の繰り延べ効果」といいます。キャッシュフローだけで言えば、入ってくるお金は今すぐ貰い、出て行くお金はなるべく遅く払うべきです。手元にお金がある期間が長いほど、その時間だけ運用して増やすことができます。

ただし、ここまで厳密に運用成績を追い求めるのは、ある程度大きな投資額を動かす時と、イニシャルで極端に少ない元手で始めるときだけです。私も投資を始めた初年度はあえて「源泉徴収なし」にして元手を増やすことに注力しました。とはいえ確定申告は結構面倒ですから、「源泉徴収あり」で発生する即納税金分のリターン機会損失はその手間賃だと思って割り切るのも現実的で賢い選択です。

おさらい

さて、相変わらず長くなってきたのでおさらいしておきましょう(笑)。証券口座には「一般口座」と「特定口座」があります。いまから口座を開く場合は、迷いなく「特定口座」にしましょう。また「特定口座」では「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」を選べます。基本は「源泉徴収あり」を選んで確定申告に行かないで良くするのがおすすめですが、厳密かつストイックに儲けを追求したいときには「源泉徴収なし」にしましょう。

後編の「株式投資の基本(4-2)」では、いよいよ3つ目の口座「NISA」について考察します。

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