為替差益の税処理を省くために~株式投資の基本(9)

おはこんばんにちは。きゅうべいです。

最近為替の乱高下が目につくようになり、特に海外ETFで国際分散投資をされている方には絶好の機会がやってきています。そこで今日は、「為替差益の税処理を省くために~株式投資の基本(9)」と題しまして、投資を行う上で皆さんが本当に知っておいたほうが良い基本的な為替テクニックをご紹介します。
これは本当に重要なんですが、投資に慣れている方は感覚的にやっちゃっているのであまり言語化されておりません。

為替差益と税処理のおさらい

さて、まずはおさらいから行きましょう。

円をドルにしたりユーロにしたりして投資/外貨預金を行う際、買った時と売った時の為替レートの違いによって「為替差益」が発生します。例えば、100万円を1ドル100円でドルに転換し、その後1ドル110円になった時に円に戻したとします。

この時、
・100万円 → 1万ドル
・1万ドル → 110万円
となり、行き帰りで10万円の利益が発生します。これが為替差益です。

日本の税法では、この為替差益は「雑所得」というカテゴリに入ります。

当ブログでは何度も出てきていますが、「雑所得」はそれ以外のカテゴリの損益と通算ができない大変不利なカテゴリです。例えば株で10万円損失を出していて外貨預金の為替差益で10万円の利益を出していたとしても、通算してプラマイゼロにはしてくれません。株の10万円の損失はそのままに、為替差益の10万円の利益に税金がかかります。こう考えると為替差益というのは本当に邪魔です。税制上圧倒的に不利ですからね。
さらに雑所得は最終的には総合所得に組み入れられますので、税率は累進課税で、しかも翌年の健康保険料や住民税にも跳ね返ってくる最低最悪のカテゴリです。

そんな為替差益をなんとかして合法的に他のカテゴリに移してしまおうというのが、本エントリーの趣旨です。

テクニック1:円建てで決済する

ここからが日本の税制の適当なところを突くテクニックです(笑)。

まず最も実行しやすいのは、為替差益を円建て決済により譲渡益に埋め込んでしまう方法です。

ほとんどのネット証券では外国株や海外ETFなどを円建てで購入/売却することができます。こうすると内部的には本当は1回ドルに替えているはずなのに買値と売値に為替要素が加味され、譲渡益として扱われるようになります。こうすることで国内株式や投資信託との損益通算が可能になります。

ただし、証券口座は比較的為替レートが不利なことが多いため、簡単ではありますがそこまでオススメのやり方ではありません。あくまでもお手軽さ重視の方法です。

テクニック2:TTMの仕組みを利用する

日本の税法上は、確定申告の際に為替レートとして「実際に転換したリアルタイムのレート」の他に「TTM」を使うことが認められています。この「TTM(とそのお仲間のTTS/TTB)」は仕事で海外取引をやる方にはおなじみなんですが、意外と知られていません。

TTSとTTBというのは「Telegraphic Transfer Selling(電信売値相場)/Telegraphic Transfer Buying(電信買値相場)」の略称です。そしてこの平均が「TTM(電信中値相場)」です。これは、各銀行が原則1日1回だけ決めるレートで、同日内であれば同じ為替レートで計算されます。昼に取引しても夜に取引しても同日内なら同じレートになります。日本ではメガバンクの三菱東京UFJのTTS/TTBを利用して計算することが多いです。

つまり、ドル転・ドル取得と同日内で商品取引をする場合には、リアルタイムの為替レートではなくこの「TTM」を使うことで、実質的に為替を気にしなくても良くなるということです。売るレートも買うレートも同値扱いにできますからね。

例えば住信SBIネット銀行で日本円をドルに替えて、その日のうちにSBI証券に即時入金を行い、さらにその日のうちに外国株/海外ETFを買うと、この間のリアルタイムの為替差益はすべて無視することができます。ただし株を売却して現金化するときには、外貨の即時出金ができないため、円貨決済にすることをオススメします。もちろん売ったドルですぐに別のものを買うのであればドル決済で構いません。ただし繋ぎ売買は同日中に行う必要があります。こうする事で為替の変動は全て譲渡益に含まれるようになります。

この応用で、証券口座内のドル余力/外国配当の端数は、配当が振り込まれたor買付で端数が余ったその日に即MRF/MMFを買い付けることで、為替差益を買値に含むことができます。こうすることで特定口座(源泉徴収あり)を使えば為替差益による確定申告が不要になります。

ちなみにですが、外貨預金というのは資産運用上は最低最悪の商品です。儲かっても損してもすべて為替差益=雑所得になってしまって損益通算ができません。(※もちろん利子については源泉分離課税です。)外貨預金をしたいのであれば、外貨預金ではなく外貨MMF/MRFを使うべきです。こうすることによりやっていることはほぼ同じなのに税法上のカテゴリを雑所得から譲渡益に変えることが出来、その結果損益通算が出来るようになります。

まとめ

ということで、為替差益を雑所得にしない/発生させないためには、裸のドルの状態で日にちを跨がなければ良いのです。日をまたぐ場合には、かならず株やMRF/MMFのような損益通算ができるカテゴリの商品に変換しましょう。逆にいえば、常にドルを取得したらその日のうちに株やMRF/MMF商品に変換するクセを付けておけば面倒な確定申告での為替差益計算を省くことが出来ます。

ただしこれはもちろん特定口座の場合のみです。一般口座はぜーんぶ自分で計算しないといけません。

これが投資歴が長い人が無意識にやっている「生活の知恵」です^^;
意外と役に立ちますよ。

※余談ですが、本屋に行くと意外と外貨預金をお勧めしている雑誌記事やムック本を見かけます。ただ上記のように、外貨預金はとてもじゃないですがお勧めできるシロモノではありません。どう考えても外貨MRFのほうが得策です。外貨MRFのデメリットは、購入してから1か月以内に売却すると0.1%の罰金=信託財産留保額が発生する銘柄があることと、名目上元本保証をしていないことです。これはMRFが形式上は基準価格1口1円の投資信託扱いであるためです。ただし、MRFは公社債を使って運用しているため、実際にやっている中身は預金と大差ありません。また、日本の証券会社では自社が倒産したときのリスクヘッジのため、顧客の証券口座の余力を自動的にMRFで運用するケースが多いです。MRFは投信なので証券会社が倒産しても保護されます。
スポンサーリンク






シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク