100円で買える投資本-黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編(海外投資を楽しむ会/橘玲 著)

おはこんばんにちは。きゅうべいです。

忘れた頃にやってくるブックオフの100円コーナー漁りシリーズ第2弾です。本日はこちら、、、


「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編」(海外投資を楽しむ会/橘玲 著)

本書は2008年7月にダイヤモンド社から刊行されています。かれこれ10年前ですね。ちょうどリーマン・ショック大爆発の直前です。そして日本の投資環境的にはまさにETFの夜明けにあたる時代の本です。本書の売りだと思われる後半部分のETF銘柄データベースは古すぎてまったく利用出来ません。しかし、この本は前半だけでも大いに100円の価値があります!相変わらず定価2000円の本を捕まえて100円の価値があるって宣伝もどうかと思いますけれど(笑)。本のタイトルはいかにもアレな感じですが、中身は至って大真面目な良書です。

ざっくりの内容:インデックス分散投資の時代がやってきたどーーー!!!

本書は、資産運用の歴史的な部分に触れていきます。かつては、富裕層(資産10億円クラス)と一般庶民(せいぜい資産数千万円単位)ではそもそもの投資戦略のオプションが根本的に違いすぎたという話です。

昔は証券市場というと個別株しかありませんでした。最小単元でも1銘柄100万はしましたから、20セクターに分散しただけでも2000万円です。じゃあ2000万円を株式に回すとなると、債券は同じだけ必要になり、さらに不動産にも1000万円ぐらい必要になります。なんだかんだで5000万円がリスク資産に必要です。そうすると、リスク資産と非リスク資産が半々ならもうそれだけで1億円です。つまり、分散ポートフォリオを組もうと思うと、ミニマムでも資産1億円ぐらい必要だったんですね。

それがインデックス投信とETFの登場で投資戦略が劇的に変わります。

最近はロボアドバイザーの事を「庶民のためのプライベート・バンク」「富裕層の資産運用を庶民にも」みたいな言い方で表現します。しかし、本当に「富裕層の資産運用を庶民にも」可能にしたのは、ロボアドバイザーではなくインデックス投信とETFです。

インデックス投信とETFは、みんなのお金を集めて”ある市場の範囲”をまとめ買いするツールです。TOPIX ETFを買えば10万円程度から主要な日本株全体にまんべんなく分散できますし、REIT ETFを使えば20万円程度で日本の不動産市場にまんべんなく(※注:ちょっとオフィスビルに偏ります)投資することができます。

いままで1億円必要だった分散ポートフォリオが、100万ぐらいからでも十分可能になったんです。これは2008年当時の劇的な革命です。それまではモダンポートフォリオ理論は大金持ちのためのものでした。それが一般庶民でもネット証券とETF/インデックス投信を使って簡単に実践できるようになりました。ここでようやく、富裕層と庶民の「そもそもの投資戦略オプションの格差」がなくなったんです。

この本は2008年刊行ですから、海外投資=全世界分散ポートフォリオについては海外口座を推奨しています。しかし今となってはニッセイ/たわら/eMaxisといった低価格インデックス投信で外国株インデックスを買えますし、iSharesの各種ETFやスパイダーも東証で買えます。ネット証券を使えば、海外ETFとしてバンガードETFだって買えます。

本当にいい時代になったものです。

著者の橘玲氏は、このシリーズの別本「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術(2008)」にてプライベート・バンクの終焉を描いています。

著者曰く、プライベート・バンクの売りは大きく3つあるとのことです。ひとつは圧倒的な預入残高を利用した世界分散投資。そしてスイスの法律に守られた代理投資の匿名性。最後に”現代の執事”として子供や孫の代まで考えた節税・金融教育のサポート。
この内、匿名性についてはスイスが法律改正でマネーロンダリングを厳しく取り締まるようになり消滅しました。最近ではパナマ文書のようにオフショア投資そのものが「ちゃんと税金を払わないでズルい」みたいな扱いで敵視されますしね。さらにETF/インデックス投信の出現により、世界分散投資も個人で手軽に行えるようになりました。これにより、プライベート・バンクはもはや実益の少ない趣味性に寄った存在になってしまい、結果的に大手金融機関に買収されブランドとしてのみ利用されるようになってしまいます。

そう、プライベート・バンクを終わらせたのは、ETFとインデックス投信なんです。

2010年代に生きる我々がこの素晴らしい投資環境を利用しない手はありません。よく「投資にはプロもアマも無い」といいます。プロが買ってもアマが買っても、株の値段は一緒ですからね。プロとアマの唯一の違いは手数料体系です(注1)。しかしその手数料さえもネット証券の台頭により劇的に下がりました。さらに最近では主要な海外ETFであれば手軽に日本のネット証券会社で購入することが出来ます。もはや現地口座すら不要になりつつあります。

※注1 隠れた違いとしてインサイダー情報と情報伝播能力があります。どことは言いませんが、某六本木6丁目にある大手外資系証券会社のように、顧客へ「買い推奨」を出した直後に自社保有株を売り抜けるor大量空売り浴びせという金融商品取引法第159条の「市場操作情報の流布」ギリギリのところを攻めるアグレッシブなプロもいます(笑)。あれは本当に取り締まって欲しい。情報発信者とプレイヤーが同じ会社という時点で利益相反関係がバッチリありますからね。

今となっては当たり前になってしまいましたが、我々の周りには本当に恵まれた投資環境がそろっています。後は活かすも殺すも自分次第ってわけです。本書はそういった時代性が前面に出ており、著者が明らかにはしゃいでいるのがよく分かるとても楽しい本です。是非、お近くの中古本屋で探してみて下さい。

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