インデックス投資とETF編~株式投資の基本(2)

「株式投資の基本」シリーズ第2弾はインデックス投資とETFです。前回の「株式投資の基本(1) 株とはなんぞや編」では、そもそも株式ってなんじゃという部分と、そして株の価格形成についてざっくりと書きました。皆さん、なんとなくイメージは出来ましたでしょうか?
いまはあくまでも基本をだーっと書いているだけですので、具体的な銘柄の選び方についてはまったく触れていません。というかさすがにそこは企業秘密(笑)。もしかしたら今後自分が買ったあとに「こういうの買ったで!」というのは書くかも知れませんが、真似して損失が出ちゃうと申し訳が無いので、そこは話半分で聞き流して下さい。

さて、今回はインデックス投資とETFについてです。これですね、本屋に行くとこのテーマだけで書かれた本が山ほどあります。詳しく知りたい方は、決定版であるバートン・マルキールの「ウォール街のランダム・ウォーカー」を読んでみて下さい。前回ちらっと紹介した占い集団「チャーター」や私の所属する「ファンダメンタルズ派」をバッサリ切り捨ててます(笑)。

インデックスってなんやねん

たぶん投資をやったことがない人でも「日経平均株価」という単語はニュースで聞いたことがあると思います。この日経平均株価というのは、日経新聞が独断と偏見で選んだ「流動性の高い225銘柄」の株価を単純平均した数値であり、オフィシャルでもなんでもない単なる「日経新聞の選んだ、オレ選抜株価」のことです。なんですが、何故か有名でニュースでは必ず見かけます。こういったある特定のルールにしたがっていろんな会社の株価を計算した指標のことを「インデックス」と呼びます。日本のインデックスで有名なのは、「日経平均株価」「TOPIX」「東証リート指数」あたりでしょうか? 東証以外のジャスダックやマザーズなど、各証券市場にはたいてい平均指標があります。

ちなみに東証のオフィシャルな指標は「TOPIX」であり、真面目なインデックス投資家は日経平均株価ではなくTOPIXを投資対象にします。

さて、この日経平均株価、たとえば「今日の終値は18,000円!3日続伸です!」とかニュースで言われた時に、ピンときますでしょうか? 実際、日経平均がその日上がったとしても、同じ日に下がっている株は山ほどあります。ものすごい極端な話、「ファーストリテイリング(=ユニクロ)」がストップ高に跳ね上がったら、他の全銘柄が下げていても日経平均は上がります(笑)。じゃあこれを防いで「日経平均」という数字に投資するためにはどうしたらいいでしょうか? 答えは簡単で、日経新聞が選んだ「オレ選抜会社」を全部一口ずつ買えば良いわけです。ただし何十億円もかかりますので、一般人には現実的ではありません。

そんなこんなで出現したのが、「ETF」というインデックス投資のためのツールです。ETFは上場投資信託の略称でして、要はみんなのお金を集めてその何十億円というお金を日経平均株価の計算式と同じ構成で買い、それを小分けにしてみんなに分けようというシステム商品です。元気玉方式ですね(←古い)。

例えば日経平均に連動した代表的なETFである「iシェアーズ 日経225 ETF(コード:1329)」は、正に日経平均そのままの18,000円で一口買えます。日経平均が上がれば同じだけ値段があがり、日経平均が下がれば同じだけ値段が下がります。実際にはその瞬間の需給バランスで若干値段がずれますが、猛烈にわかりやすい商品です。景気がよくなったら上がり、景気が悪くなったら下がる。どこか1企業が不祥事を起こそうが、どこか1企業が大好評爆上げしようが、そんなに影響がありません。あくまでも「日経平均」という架空のバランス計算式に投資ができます。

ただしこのETFにはメリットもデメリットもあります。

ETFのメリット・デメリット

一番のメリットは、個別銘柄の影響を極力排除して、ざっくりとした概念に投資ができることです。例えば「いまインド経済が熱いな!」と思った時、あなたはインド語(ヒンディー語?)が読めるでしょうか? インド企業で財務が良好で業績が安定している企業を探せますか? やってやれないことはないでしょうが、相当難易度が高いです。そんな時は「NEXT FUNDSインド株式指数上場投信(1678)」を買うと、ざっくりインド経済全体に投資ができます。
同じように、市場には数多くのインデックスETFがあります。変わったところだとオーストラリアの不動産業界に投資する「上場インデックスファンド豪州リート(1555)」ですとか、原油価格に投資する「NOMURA 原油インデックス連動型上場投信(1699)」なんてのもあります。こういった個人で調べるには厳しいけどざっくり「その辺」に投資したいという場合、ETFは抜群の効果を発揮します。

一方のデメリットはというと、これは明確です。夢がない(笑)。指標はなにかしらの平均だったり合算だったりしますので、いきなり倍になったりしません。例えば日経平均で言えば、バブル時代には3万円あったのに、いまは2万円に行っただけでお祭り状態です。。むしろ下がってます。これはメリットでもありデメリットでもあるのですが、インデックス投資は大損するリスクが少ないのと同時に、大儲けするチャンスもありません。良くも悪くも「みんなと同じ感じ」にゆったり上がってゆったり下がります。

さらにもう一つのデメリットは手数料の存在です。個人で個別銘柄を購入する場合は、買う時に手数料がかかるだけで「維持費」はかかりません。ところがETFの場合、運営側がその指標に連動するように銘柄の数を微調整する手間がありますので、運営維持費が発生します。この維持費が「管理手数料」として配当から天引きされます。アメリカでは前述のバートン・マルキールの影響でETFが大流行しており、バンガード社とブラックロック社という2大金融会社が激しい手数料争いをしています。そのおかげでこの管理手数料がものすごく安く、0.1%を切っているものもちらほらあります。日本もだいぶ下がってはきましたが、それでもいまだに野村あたりの商品は0.2%前後取ってきます。0.2%って言ったら、100万円分買っただけで年間2000円ずつ取られる計算です。意外とバカにできません。ですから、自力で個別銘柄を選定して分散投資ができるのであれば、そちらのほうが当然お得です。

インデックスETFは普通の投信よりメリットがある

とは言え、、、という所で、銀行等で販売している普通の投資信託(=非上場の投資信託)は、手数料0.6%ぐらいがザラです。こういったものと比べた場合、ETFの手数料はメリットになります。投資信託を買うぐらいなら、ETFの方を個人的にはオススメしたいです。もちろん、ETFは株と同様に基準価格の整数倍でしか投資ができませんから、定額積立投資をしたい場合は非上場投信の方が向いています。

ポートフォリオについて

一般的に、株価や景気はグラフ上で波打ちながら進んでいきます。上がるときも下がるときも、一直線にストーン・スカーンといくことはあまり無く、うねうねしながらなんとなくそっちの方向に流れていきます。このウネウネがある種のリスクなんですね。全体として上がっていったとしても、ウネウネの上と下では半年ぐらいタイムラグがあったりしますから、下手なところで掴むと半年損するなんてことがよくあります。

このうねうねの波を、別の動きをするいろんな波でいい感じに打ち消そうというのが「現代ポートフォリオ論」の基本的な考え方です。イメージ的にはヘッドフォンのノイズキャンセリングと一緒ですね。ノイズキャンセリングヘッドフォンは、外の音と逆に動く音波(=逆位相の波といいます)をぶつけることでいい感じに波を消そうという仕組みです。波を抑えこむ動きです。経済の波についても同様で、「いろいろな動きをする波をいい感じにまぜることで上手いこと波が消せるんじゃないか」というのは理論上正しいです。では、問題は、そんなに都合の良い「逆位相の波」があるのでしょうか?

結論からいうと、ありません(笑)。そりゃそうです。あったらみんなお金持ちです。でも、「株式」「債券」「不動産」「金などの現物資産」を混ぜることで、完全には消せないものの波を小さくする事ができます。これをやるのが「アセットアロケーション」とか「ポートフォリオ」と呼ばれる分散投資の方法です。

一般的には、「株式」と「債券」はほぼ逆の動きをします。さらに同じ株式の中でも「日本株」と「ヨーロッパ株」は逆の動きをします。一方、金や石油はあんまり株や債券とは関係ありません。我が道を行きます。

例えば、私は会社で入っている企業型確定拠出年金に以下の割合で投資をしています。

カテゴリ 割合
米国株インデックス 45%
日本株TOPIX 35%
新興国株インデックス 10%
国際債券 5%
世界リート(不動産) 5%

実際は確定拠出年金の中だけでバランスを取る必要はないのですが、なんとなく気分の問題です。投資効果だけでいうならば、税金のかからない長期投資の確定拠出年金では全力で100%米国株インデックスに行くのが正解です。そしてそれとバランスを取るように、個人のNISA枠を使って日本株ETFを買っとけば良いんです。本当は…。実を言うと、ちょうど確定拠出年金が始まったときに同じ部署に投資経験がある人が私しかおらず、全員分の分配割合の相談に乗ってたんですね(笑)。他人に教えた手前、自分だけ米国株インデックス全力ってのは気が引けたってのが本当の所です。

私の上記配分は、ポートフォリオ的に言うとあんまり波を消していません。年金資産についてはどうせ30年近く投資することになりますので、ちょっと多めにリターンを取ってやろうという攻めの姿勢の表れです(笑)。
投資の世界では、冗談ではなく「タイム・イズ・マネー」です。時間をかければ、お金はリスクを抑えながら着実に増やせます。

第三の選択肢:ファンド・オブ・ファンズ

さて、4,000文字を超えて盛りだくさんになってまいりました。こんな文字ばっかりのブログを見ていただいてありがとうございます。よろしければちょいと画面から目を離して茶でもしばいでください。

上述のようなバランスを取る投資には、インデックスETFは最適です。なにせもともとの波が穏やかで、ETFの1商品だけでもある程度分散が出来ていますから、さらにそれを束ねれば、それこそ全世界地球上バランスなことが可能です。「薄く広く」の極北です。ところがどっこい、これはバランスを取り続けるのが大変なんですね。一回組んじゃえば年に一回バランスを直せば良いんですが、安定している分あんまり面白みがありません(笑)。

そこで登場するのがファンド・オブ・ファンズです。

金融商品というのは生き馬の目を抜くようなところがありまして(笑)、次々に変な商品が出てきます。株式をあるルールに則って束ねたのが「インデックスETF」だったとするならば、さらにその「インデックスETF」をいい感じに束ねるのが「ファンド・オブ・ファンズ」です。

ファンド・オブ・ファンズ、すなわち「投資信託を束ねた投資信託」は、この上記のバランス取りの作業をやってくれるサービスです。もちろんバランス取り用の手数料がかかります。そもそもファンドで手数料がかかっているのに、さらにそれを束ねるのに手数料がかかるという、、、ほんと証券マンは手数料ビジネスが大好きです(笑)。まぁ手数料は確実に儲かりますからね。

ファンド・オブ・ファンズ単体でも汎用商品がありますし、さらにそれをオーダーメイドでやってくれるサービスもあります。このオーダーメイドのサービスが、ラップ口座であり、ロボ・アドバイザーです。

一般的に、汎用商品では「自分が好きないい感じのバランス」というのがなかなかありません。かと言って、ラップ口座というオーダーメイドサービスを頼むと、手数料で2~3%ぐらい持って行かれます。3%って!リターン3%取るのも大変なのに、手数料で3%持って行かれたらどうなっちゃうんでしょう。どれだけリターンを稼げば元が取れるんでしょうか? それならなんも考えずに「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)」という世界全体を束ねた最強の「薄く広い」ETFを無心で買い続けたほうが得です。難点は海外ETFなので税金処理が面倒なことですが、、、、。

アメリカでもこのラップ口座ビジネスはみんな不満爆発でして、そんななか登場したのがロボ・アドバイザーです。
どうせバランスを取るだけなら、3%も手数料いらないじゃないかと。「人間がやるから高いっていうなら、プログラムにやらせりゃいいじゃん」というわかりやすいサービスです(笑)。

ロボ・アドバイザーは、その名の通り、プログラムで機械的にリバランスをしてくれるASPサービスです。最初にバランスを決めたら、あとは勝手にバランスを取り続けてくれます。ただし、日本のロボ・アドバイザーは「THEO」も「ウェルスナビ」も手数料を1%取ってきます。この1%を手数料として許容できるかどうかがロボ・アドバイザーに興味が湧くかどうかだと思います。1%も取られるならバランス投信の0.6%のがマシじゃないかというのも一理ありますし、いやいやオーダーメイドなんだから1%ぐらいは仕方ないだろってのも一理あります。日本では始まったばかりなので手数料価格競争がまだ起きていませんが、両者ともそのうち0.5%ぐらいの手数料まで落ちていってバランス投信と同じぐらいのコストに落ち着くと思います。一般の方はそこまで様子見が正しいかと思います。私はギークかつアーリーアダプターなので、一足先に人柱いたします(笑)。真面目な話、海外ETFをリバランスするのって自分でやると物凄いコストがかかるので、あながち1%も暴利ってわけでもないと思ってます。高いですけど(笑)。

とまぁそんなこんなでおさらいです。

  • 安定した投資をしたいならインデックス投資がベスト!
  • インデックス投資なら投資信託よりETF!
  • いい感じのバランスは自分で探そう!
  • 分散割合は日本株よりアメリカ株のが少し多めに!
  • ラップ口座はデンジャラス!
  • ロボ・アドバイザーはまだ早い!

オススメの日本で買えるETF/インデックス投信

一応無責任にもオススメしておきますと、以下のETFをいい感じに組み合わせると良いと思います。これらは東証で買える信託報酬が安い商品群ですので、少額でも気軽に投資ができます。

種類 銘柄コード 名称
米国株 1557 SPDR S&P 500
たわらノーロード先進国株式
日欧株 1475 iシェアーズ TOPIX
1386 UBS ETF欧州株
新興国株 eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
不動産 1345 上場インデックスファンドJリート隔月分配
国債
ゴールド 1326 SPDR ゴールド・シェアーズ

例えば「iシェアーズ TOPIX(1475)」であれば、おおよそTOPIXが1300ポイント台前半の時に買えば「元本割れして二度と価格が戻ってこない」という可能性はかなり低いです。そんでもって年率で1.2%くらいは分配金(=利子的なもの)が入ってきます。2016年12月16日現在では1600ポイントを超えてちょっと買いづらいですが^^;
あくまでも個人的な意見ですが、例えば100万円を年利0.03%の定期預金に入れておくくらいなら、5万円分だけ「iシェアーズ TOPIX(1475)」を買って残りの95万円を普通預金にしておいた方が流動性もリターンも効率的だと思います。あくまでも私見ですので責任は取れません。当然元本割れリスクもありますしね。

次回は、私が大好きなJ-REIT(上場不動産投資信託)について書きたいと思います。政策金利の利上げを控えた今はちょっと買いづらい環境ですが、ポートフォリオのスパイスとして抜群の効果を発揮してくれるナイスな商品群です。

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