おはこんばんにちは。きゅうべいです。4年ぶりすぎて、WordPressにログインするのにちょっと手こずりました(笑)。
さて、私の「チラシの裏」こと当ブログ。エンタメ業界の半地下で暮らす私・きゅうべいの情熱が振り切れた時に、唐突に記事が上がります。
そう、それが今!!!
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ってなわけで、ディズニーの実写「白雪姫(2025)」で怒りメーターが振り切れたと思ったそこのあなた!m9( ゚ω゚)
ハズレです!…ご期待に沿えず、あいすいません。
白雪姫でも書こうと思えば書けるんですが、そんなことよりも(←失礼)、もっと書きたいことがあります。
実は私、いま超ホットなのが、よりによって「パラサイト~半地下の家族~」ならぬ「半地下のアイドル」なのです。本職とあまりに近すぎるのでこの話を書くかどうかちょっと迷ったのですが、それでも吐き出したいくらい熱量が溢れまくっているので、気が変わらないうちに一気に書いていこうと思います。
いま溢れているテーマは2つ。「久しぶりに覗いたアイドルビジネスの過酷さ」と「CD/配信から見る音楽流通」の話です。熱量が溢れまくっているので、とりあえず前者を書いていきます。1万文字ぐらいになるかも(笑)
悪しからずご容赦ください。
始まりは、YouTubeでたまたま見た動画でした。
この業界の人間のご多分に漏れず、私も元テレ東・佐久間宣行さんの「Nobrock TV」は必ず見ています(笑)。そこで、2025年3月12日の回「【超逸材】大喜利が強すぎるアイドル新居歩美は本物なのか?ラランドニシダ、ザ・マミィ林田と緊急検証!」を見て、「なかなか面白いじゃないか」と思ったんです。
それで、新居歩美さんという方が、いわゆる地下アイドルの「ドラマチックレコード」のメンバーで、「アイドル天下一大喜利武道会」というイベントで勝ったらしいと……。
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ここからがYouTubeの恐ろしいところです。
当然、関連動画で出てくる「第一回アイドル天下一武道会!可愛くて面白いアイドルは誰だ!」を、流れで見ちゃいますよね。
へぇ〜〜。アイドルバラエティとしてよく出来てるじゃない。
「ラフ×ラフ 公式YouTubeチャンネル」???
ラフ×ラフって聞いたことないな。どんなグループ???
こういう時の常で、とりあえずチャンネルの動画タブで「古い順」を押すじゃないですか。
お!? ドキュメンタリー????
最初のオーディションを始めるところからやってるの????
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何の気なしに見始めたのが、たぶん3月13日か14日だったと思います。
なんとですね、4月1日までの20日間ぐらいで230本近い動画を全部見ました(笑)。
さらっと計算しても、一日3〜4時間くらい見てると思います。マジで。
通勤の往復はもちろん、風呂でもiPadで見てますからね。
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これ、めちゃくちゃ面白い。アイドルバラエティとして完璧じゃないかと思うくらい。
最初はモゴモゴして何を言っているのか分からないレベルの子たちが、どんどん垢抜けて喋れるようになって、1周年ライブ以降は十分に第一線で戦えるレベルになっているんですね。
しかも、無茶振りされて最初は正直微妙だった大喜利なんかも、どんどん上達して普通に通用するぐらいにはなってる。外ロケだってちゃんと成立している。
成長する姿を見せて応援してもらうのがアイドルの本分だとしたら、この子たちは間違いなく一線級のアイドルです。
……が、ところがですね……。
ここから、すごくビジネス的なジレンマというか、ある種の悩みにハマってしまったのです。
アイドルは完成度と成長度のどちらを見せるべきか
私がアイドルの仕事に両足を突っ込んでいた2010年頃、アイドルの主流は、未熟な子たちが全力で頑張る姿を見せる「スポ根成長もの」でした。酸欠汗だくで踊り狂うももクロを筆頭に、奇才バカリズムの無茶ぶりに食らいつくアイドリング!!!、ソニーに契約解除されたという逆境を『RIVER』でナニクソ精神にまで昇華させたAKB48(※)などなど。みんな、ある種の負荷=ストレスをかけられ、それを跳ね返すところに魅力が見えるという……いま思うと、残酷ショーぎりぎりのグロテスクな構造です。でも、そこには涙なしでは見られないカタルシスがあったんですね。
一方で、たとえば東京女子流とかさんみゅ〜みたいな、恵まれたお嬢様っぽい感じのグループって、あんまり人気が出なかったりして、いわゆる80年代アイドルとはセールスの方法論が全然違っていました。
たとえば、当時のアップフロントって業界でも異質で、プロダクション部門があって、カメラマンとかエンジニアも社内で抱えてたんですね。(※今もいるかもしれません)そのレベルも良い意味でバケモノ揃いで、タレントたちのスキルは当然として、音響スタッフから映像スタッフまで、ほぼ全員がフォーメーションも譜割りも完璧に覚えてたんです。少なくとも作品としてのレベルは、当時のモー娘のほうがももクロよりも圧倒的に上でした。今でも当時の『女が目立って なぜイケナイ』とか見ると、軽く引きます。
でも、じゃあどっちが売れたのかと言えば、皆さんご存じの通り、ももクロです。
これが難しい。
当時、ももクロのファンは男性ばっかりでしたが、モー娘はメンバーと同年代の女性ファンも2割ぐらいいました。ももクロはZになって『Z女戦争』ぐらいから徐々に女性ファンが増えていきましたが、それでも1割がせいぜいだった記憶があります。そうそう、物販のライブTシャツもサイズごとの手配数が全然違いましたね。こういったところから、ざっくりと「スキルに振ると同世代同性の憧れ要素が増える」「スポ根に振ると熱烈応援の男性アイドルオタクが増える」という分類で考えていました。ここでいうスキルってのは、容姿・ダンス・歌唱力も含めた、そのタレントさんの能力値のことです。つまり、完成度と成長度のバランスですね。私は自分が男で、かつ女性アイドルのビジネスだったので、後者の成長度重視の方法論が中心でした。
ところが、ここ2〜3週間で一気に現状のマーケットを調べてみると、どうも以前と様子が違っているように見えます。
アイドル産業の飽和と超レッドオーシャン化
恐ろしいことに、2025年現在、アイドル産業は完全に飽和しきっています。YouTubeだったりShowroomだったりの配信プラットフォームが手軽で身近になった結果、極論を言えば「私は今日からアイドルになります!」と言い張れば、なれちゃう。一昔前の路上ミュージシャンぐらいのノリでアイドルになれちゃうわけです。プレーヤーの母数=競技人口が増えれば、それだけ全体のレベルは上がるわけで、市場はもはや閻魔大王の血の池かってくらい真っ赤っ赤です。
それというのも、前述のYouTubeに出ていた新居歩美のドラマチックレコードについて。どんな曲をやってるのかなと、YouTubeに上がっていたNATSUZOME2024のライブ映像を見たら、めちゃくちゃよくできてるわけです。私、既発の25曲の配信音源を全部その場でポチって、本気で聴きました。締めて6,630円でございます。正直、クオリティはバラバラですけど、それでも「瞬間ドラマチック」「姫君センセーション」「君はソナチネ」「夜空のよすが」「朱夏は微熱」「500光年の恋」あたりは、どこに出しても恥ずかしくないです。
ところがですね、このドラマチックレコード、恐ろしいことに都内でも500人以下の会場でライブをやってるわけですよ。
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マジで!?
これで売れないの???
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いやね、クオリティがあれば売れるってわけでもないんですが、それにしてもコレで売れないの、キツすぎじゃないかと。
ドラマチックレコードのキャラクターとかストーリーをまったく知らなくても、全曲買うぐらいの輝きはあったので、ちゃんと知られていれば都内単発なら1,000キャパぐらいはいくんじゃないかって感覚でした。
そんでもって、関連動画に出てきたいわゆる“地下アイドル”の動画をランダムで飛ばし飛ばし見まくってみると、明らかに全体のレベルが上がってます。
これはとんでもないことになってるなと、目からウロコが飛び出しました。
つまりですね、昔なら「成長度」を見せるコンテンツは「最低限のスキル」しか求められていなかったのに、2025年基準だと、その「最低限のスキル」の基準が爆上がりしてるって話なんですね。スキル主義のK-POPの影響なのか、はたまたシンプルに母数が増えたことによる過当競争の産物なのか。因果関係はわかりませんが、間違いなく要求水準は上がっています。
さらにその後、今度はラフ×ラフの楽曲を全部買って、同じく本気で聴いたんですが、正直、ほぼ全部クオリティは高いものの、こっちはこっちでちょいと別の問題が見えました。
閑話休題:音楽のクオリティに関する主観的定義
ここでちょっとデリケートな「音楽のクオリティ」に関する話をしたいと思います。
賛否両論、100人100とおりの考えがあっていいので、あくまでも個人的な見解です
音を要素分解する
まず大前提として、音には「音韻(おんいん)」と「音響(おんきょう)」という2つの要素があります。
ここでは、音の波形を使って説明しましょう。

ヤマハの製品情報より引用
https://jp.yamaha.com/products/contents/proaudio/docs/better_sound/part1_01.html
音韻というのは、音の周波数によって変わる「高さ」のことで、ほぼ「ドレミの音階」と同じニュアンスだと思ってください。英語では “scale” といいます。 私が「ドレミの歌」を歌っても、ピアノやバイオリンで「ドレミの歌」のメロディラインを弾いても、音韻は一緒です。 ちなみに五線譜の基準になる「真ん中のド」=ドレミの歌の最初の「ド」は、物理学的には「261.62Hzの周波数の音」と定義できます。

StackExchangeより引用
https://dsp.stackexchange.com/questions/46598/mathematical-equation-for-the-sound-wave-that-a-piano-makes
一方の音響というのは、音の波形のことです。
同じ「ドレミの歌」でも、ピアノとバイオリンでは弾いたときの波形が全然違います。
同じ「ド」の音を鳴らしても、楽器が変われば音の響きが変わりますので、「ピアノのド」と「バイオリンのド」を聞き間違うことはないでしょう。
これが音響で、英語では “sounds” です。業界では普通に「音響」で通じますが、わかりづらい人に話すときは「音ざわり」とかって言うこともあります。
抽象的ですが、「音の肌触り」というか「感触」みたいなものです。
同じメロディラインでも、サイン波(※聴覚検査で使うやつです)とオルゴールの音では、感じるイメージが全然違います。
音楽における「音韻」と「音響」
ここからが本題です。
音が重なって音楽になったとき、「音韻」と「音響」はどのような影響を与えるのでしょうか? 簡潔に結論から言うと、「音韻」を重視すると、よりポップで安っぽくなり、「音響」を重視すると、より芸術的で高級感が出る代わりに難解になります。
どういうことか、説明しましょう。
「音韻」要素と楽曲
音韻というのはドレミのことで、いわゆるメロディラインやバックトラックのメロディに相当します。AKB48全盛期の井上ヨシマサさんの曲なんかは、毎回わかりやすいギターソロがイントロで流れて、Aメロにつながりますよね。
他にも、私がたぶん人生で一番聴いている「ばらの花(くるり)」は、変ホ長調の少しアンニュイで悲しげなメロディの曲で、キーボードの「ド・ファ・レ・ミ、ド・ファ・レ・ミ」というミニマルで儚いフレーズが、一曲を通してバックでずーっと流れています。
こういったメロディラインの音韻要素を極端に突き詰めていくと、童謡や合唱曲になります。誰でも歌えて、再現性が高くて、楽器を選ばずに演奏できるからです。星の数ほどある校歌なんかはその典型で、別にピアノで伴奏しようが、オルガンで弾こうが、ブラスバンドで演奏しようが、なんだっていいじゃないですか。歌うメンバーが変わっても、校歌は校歌です。
音韻ってヒット曲には非常に重要な要素で、「カラオケで歌いやすい」=「耳に残りやすい」んです。最近だと、YOASOBIは打ち込みで音韻を突き詰めていると思います。「アイドル(YOASOBI)」なんかはテンポ自体が速くて一見難しそうですが、音韻要素が強いぶんだけ、カラオケでも問題なく歌えると思います。
他にも、アナ雪の「Let It Go(May J.)」は、わかりやすい音韻音楽です。別にMay J.のビブラートを真似しなくても、音楽としての価値が下がることはなく、小学生でも歌える素晴らしいポップソングですね。
一方で、音韻要素が強すぎると、どうしても安っぽく聞こえてしまうのは否めません。「誰でも歌える」=「プロっぽくない」って感じです。
時節柄名前が出しづらいですが、「世界に一つだけの花(SMAP)」なんかも典型的な音韻音楽なので、音楽の教科書に載せてみんなで歌う分には、とてもわかりやすくて良い歌です。別にキムタクのモノマネをしなくても歌えますから(笑)。
「音響」要素と楽曲
一方の音響は「音の響き」=「波形」の話なので、再現性が低く、ユニークな価値を持っています。ジャズやクラシックなんかはその典型で、同じ曲を演奏していても「この録音は〇〇年の〇〇テイク」のように、その時々で評価が変わったりします。
他にも、ブルースロックで多用されるエレキギターの歪みであったり(a.k.a. ジミ・ヘンドリックスがウッドストック1969で弾くアメリカ国歌)、アコースティックギターやクラシックギターの弦を弾くときの「ビィン」っていうノイズを音響要素として使うこともよくあります。
自分はあんまり詳しくないのですが、よく「ニルヴァーナの曲をカバーするならフェンダーのジャガーじゃなきゃ許せない!」とか聞きますよね。同じギターでも、この楽曲にはこのモデルの音響じゃないとありえへん、みたいな。
これは歌謡曲でも同じことが言えて、たとえば松任谷由実さんの声はホーミーっぽい不思議な合成波形になっていて、他人には真似できないオンリーワンの武器です。
古いところだと、「ダンシング・オールナイト(もんた&ブラザーズ)」もゴリゴリの音響音楽です。もんたよしのりさんのハイトーン・ハスキーボイスがあっての名曲なので、カラオケで普通に歌っても、全然違う曲になっちゃいます。
同じく「愛をとりもどせ(クリスタルキング)」のあのデコボコ感は、ソロで歌っても出ませんし、二人でモノマネする以外に歌いようがありません。
他にも「ナイトライダー(QURULI ver.)(くるりとリップスライム)」は、音韻要素の強いポップなメロディーと、音響要素が強いファンクな演奏が噛み合った珠玉の名作です。
ちょっと変わり種だと、「angel song -イヴの鐘(the brilliant green)」なんかも、大ヒットソングであるにもかかわらず、やってることは音響ノイズ成分の強いシューゲイザーそのものです。「ついに日本でマイブラの『Only Shallow』をパクったヒット曲が出てきた!」と、当時大興奮したのを覚えています。
知らない人にぜひ聴いてほしいのは、1人テクノユニット大正九年の「そこのそこ」です。超アンニュイなボーカルと、ちょっと怖いテクノポップなバックトラックが病みつきになる、稀代の怪作です。
音響成分は、その楽曲のオンリーワンな魅力や格式・雰囲気を出すのに非常に重要な要素です。いわゆる高級オーディオは、この「音の響き」を制作者の意図どおりに聴くことをゴールにしているため、音楽マニアになればなるほど、音響成分が好きになる傾向があります。私の知っている一番ひどい例(←褒め言葉です)では、ジャズトランペッター兼シンガーのチェット・ベイカーが息継ぎするときに鳴る「入れ歯をはめ直すカチャっていう音」を聴くために、200万円ぐらいするスピーカーを2本買っていました(笑)。
以上を踏まえた「楽曲のクオリティ」
私の見解として、「楽曲のクオリティ」とは、この「音韻」と「音響」のバランスの良さのことだと思っています。「音韻」要素が強すぎて安っぽくなってはいけないし、「音響」要素が強すぎて現代音楽のように難解で閉鎖的になってもいけない。程よくポップで、程よく音のエッジが効いている――そのバランス感だと思うんです。
ちなみに、「ある曲をその曲たらしめている要素」が音韻にあるか音響にあるかで、「音韻音楽」「音響音楽」と分類することもあります。ジャズ、ヒップホップなんかは音響音楽であることが多いですし、クラシックやポップスは音韻音楽であることが多いです。ロックはケースバイケースで、アコースティックなものやオルタナティブなものは音響音楽であることが多く、意外とメタルには音韻音楽が多かったりします。
というわけで、ここからアイドルの話に戻りたいと思います。
アイドル楽曲のクオリティの出し方・方法論
ここまでいくつかの曲を取り上げてきましたが、バランスの取り方は基本的に2通りなんですね。
「ポップなメロディラインと音響的なバックトラック」か、「音響的なボーカルとポップなバックトラック」です。例外的に、それこそ松任谷由実や宇多田ヒカル、椎名林檎、やくしまるえつこ、最近だとあのちゃんのように、極稀にボーカル単独で音韻と音響を両立できる天性のスーパースターがいます。
一般論として、アイドルソングはソロパートと群唱パート(※ハモリなしで複数人が同じメロディを地声で歌うこと)に分かれます。そして群唱パートについては音響要素を出すのが難しいので、結果的には「ソロパートをどうするか」が重要になってきます。ちなみに、アイドルで群唱/合唱の音響要素を完璧に昇華させて見せたのは、AKB48の「桜の栞」と松平健の「マツケンサンバII」ぐらいだと思います。
「音響的なボーカルとポップなバックトラック」の場合、ソロパートで個性的=音響的な声を出してもらう必要があります。が、実は歌声自体が個性的でなくても、セリフ的な歌い方だったり、掛け声的なもので誤魔化すやり方もあります(笑)。悪い言い方をすると、タレントがスキル不足のときにそれなりのクオリティを出しやすいのはこっちです。
例としては、ももクロの「行くぜっ!怪盗少女」、ドラマチックレコードであれば「姫君センセーション」がこっちです。ラフ×ラフは実はこのパターンの楽曲はありません。いわゆる「アキバ系」「電波ソング」と紙一重なので、プロダクト側は結構気を使います。
一方の「ポップなメロディラインと音響的なバックトラック」。歌謡曲としてはこっちが本道です。昨今の代表作といえば当然あのちゃんの「ちゅ、多様性。」と新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」です。ドラマチックレコードであれば「君はソナチネ」と「夜空のよすが」、ラフ×ラフだと「laughing!」「サバ☆サマ!」「クライアント」「パッパッ」「かわいいスイッチ」。
個人的にはこっちのパターンの方が好きです。ただ、アイドルがこっちで戦うのは凄く難しくて、シンプルに歌の上手さとかスキルが求められるんですね。
ちなみにラフ×ラフで挙げなかった「100億点」「超めっちゃ”キュン”でしょ?」はボーカルもバックトラックも両方とも音響的で、音楽マニア向けの嗜好品となっています。
私はこういうドラッギーな音楽は大好物です。
「ワタシイロ光る」「君ときゅんと♡」は逆にボーカルもバックトラックも両方とも音韻的で、良くも悪くもファンサービス的な楽曲です。
個人的には「君ときゅんと♡」はもったいなさ過ぎて言いたいことがいっぱいありますが、それはまた別の機会に。
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ちょっとだけ書くと、YouTubeの企画内の最後の方で「遠藤ナオキさんが仮トラックを付けたデモテープ版」が超絶よく出来ているのに、何故か商品になると井上ヨシマサさんのオマージュになっちゃって「あれ?そっち?」って感じです。
「LOVEずっきゅん(相対性理論)」をやろうとしているのかと思ったら、「大声ダイヤモンド」とか「言い訳Maybe」をやりたかったのかなと?もちろん発注側のオーダー通りなんでしょうが、ちょっともったいないなって思います。
ラフ×ラフを見て思った難しさ
だいぶ長く書いてきましたが、もう少しで終わります。
地下アイドルさんたちの曲をランダムで聴きまくってみると、やはりほとんどが「ボーカルもバックトラックも両方とも音韻的」なパターンが多いんですね。良く言えば聞きやすく、悪く言えば面白みがあまりない曲。ドラマチックレコードも、25曲買って時系列順に聴いてみると、やはり初期はほとんどこのパターンでした。ポップはポップなんですが、頭には残らず、「じゃあそれで?」っていう次が出てこない感じ。それが2024年1月発売の「君はソナチネ」で明らかに楽曲のメソッドが変わって、「お!?これは下積みが終わっていよいよ本気で売りに来たな」ってのがビンビン伝わってきて、とても良いです。ライブアイドルらしく、しょっちゅう都内でライブをやっているみたいなので、近々一度見に行こうと本気で思っています。
一方のラフ×ラフ。正直、初期の音源は曲単体では成立してなくて、あくまでも企画モノというか、YouTubeで流れているストーリーありきの楽曲です。それが「クライアント」から露骨にクオリティが上がります。明らかにプロダクト側のやる気が変わっていて、「音に気を使っている」「音響を意識した曲」になっています。マスタリングも良くできているし、
これを歌番組とかで流せれば、間違いなくファンが増えます。
ところが、残念ながら曲と本人たちのスキルが釣り合っていないんですね。配信音源で聴くと滅茶苦茶良くできているのに、YouTubeでライブ映像を見るとその良さが再現できていない。
これ、結構なジレンマです。
自分が関わってきた範囲で言うと、「クライアント」以降の曲を生ライブで再現するのは、「プラチナ9」とか「10 MY ME」の頃のモー娘クラスの踊りながら歌うスキルが必要です。つまり超絶難関というか、ほぼアスリートの世界。ギリギリ「超めっちゃ“キュン”でしょ?」だけは勢いで押し切れますが、それ以外は正当派の難関曲です。
ここから完全に私見ですが、タレントさんのスキル不足が観客に見えちゃったら負けだと思うんです。もちろんタレント側には練習頑張ってくれとか、場数踏んでくれとかって話なんですが、でもプロダクト側はそれが目立たないように最大限サポートするべきであって、滅茶苦茶高いハードルを投げて「あと頑張れ」はちょっと可哀想じゃないかと。もう少し見合ったハードルってあるんじゃないかなって。 ただその一方で、メンバーさんの年齢的にはあまり悠長に下積みしているわけにもいかなくて、これ結構難しいぞと。個々人のキャラが立って、個性で仕事が入ってくるようになれば何の問題もないんですが、それはそれで過当競争気味で相当ハードルがありますしね。
つくづく難しいなと、別に自分が担当しているわけじゃないのに物凄い考え込んでいます(笑)。
あくまでも一般論ですが、この業界ではタレントの人間性にファンがつくのがベストシナリオなんです。例えば伊集院光さんだったら、ラジオの「深夜の馬鹿力」を聴いているリスナーと、テレビタレントとして見ている人では印象も評価も全然違います。私は中学生のころから馬鹿力を聴いていますので、時間にして3000時間。ちょっとやそっとじゃ嫌いになりようがありません。
人間性のファンになるかどうかって、その人に接触している時間が重要なファクターなので、アイドルが初見のファンを引っ張ってくるには、やっぱり楽曲なりパフォーマンスの力だったり、強烈なキャラクターだったりします。ももクロだってNHKのMUSIC JAPANでエビ反りジャンプをしてなかったら、売れてたかわかりませんし。ラフ×ラフの場合はパフォーマンスがフックになって、それでYouTubeチャンネルに辿りついて、さらにストーリーとキャラを知ってもらえれば勝ちかなと思います。
「ラフ×ラフ 公式YouTubeチャンネル」のオーディション動画の3時間くらいを完走すれば、そこから彼女たちを応援しない人はいないと思います。それくらいストーリーラインは完璧です。ただ長さが絶妙にハードルになるので、現メンバーだけ抜粋したダイジェスト版「デビューまでの道」をご新規さん用に別で用意した方がいいかなとは思います。
なんとかして皆に見つかってほしいなとモヤモヤしています。
そんなわけで後編は「CD/配信から見る音楽流通」をテーマに行きます…元気があれば(笑)。