おはこんばんにちは。きゅうべいです。
相変わらず一回文章を書き始めると言葉が止まらないわけですが(笑)、久々に投資の状況と考え方についてもアップデートしようと思います。
前回、投資について書いたのが2020年11月21日公開の「きゅうべい、アセットアロケーションを見直す」という記事でした。当時は新型コロナ全盛期で、「もしかしたらそろそろワクチンが完成するんじゃないか?」くらいの雰囲気の頃です。ライブやコンサートは軒並み中止。世間的にはリモート就業が当たり前で、外食産業や娯楽産業はほぼ壊滅していました。実は私、新型コロナの流行期間中の数年間でリモート就業をしたのは2日だけで、ほかは原則ずっと出社していました。エンタメ業界なので、現場にいないと成立しませんからね。とはいえ、新曲のリリースはストップ。アニメも中国に外注していた動画や仕上げ工程が上がってこず(※1)フローが止まってしまい、さらに実写映画もまともにロケができず、グダグダでした。
そんな背景で書いた記事は「新型コロナのワクチンが2021年に完成したら経済が戻ってくる」「経済オンチのバイデンが大統領になったことで大きなインフレが発生する可能性がある」「その対策としてアセットアロケーションにゴールドを追加する」というものでした。4年半経った今、振り返って答え合わせをしてみると、大枠は当たっていたかなと思います(※2)。
ここからは今の経済に対する個人的な見立てとして、今回は主に世界経済サイドを書きたいと思います。国内経済についてはまた別途後編として書くつもりでいます。
「カマしてナンボ」のトランプ式外交
2025年4月現在、世界経済――特にアメリカはインフレの最終局面にあります。ここ4年間で物価は爆騰し(※3)、そんなインフレが2024年後半くらいから徐々に上げ止まり、2025年初頭では感覚的に収まりつつある(※4)ように見えました。ところが、3月に入ってアメリカの「帰ってきた大統領」トランプが大暴れを始めます。唐突にアメリカvs世界の関税戦争が始まり、またたく間にインフレ再燃&世界大混乱、というのが現状です。
さて、ここからは私の見立てです。おそらく世界中の人がドン引きしている米トランプ大統領のここ最近の行動ですが、私はこれを「トランプ大統領なりの交渉術のクセ」と捉えています。具体的には、彼はビジネスマンとしての交渉スタイルが「まず一発カマして、相手のレスポンスを見てから交渉をスタートさせる」タイプだと思うのです。
・とりあえず無理難題を吹っかける
・「そりゃあ流石に無理っすよ」と返ってくる
・「じゃあ、どこまでなら妥協できるんだ」と交渉スタート
大阪のおばちゃんの値切り交渉みたいなもんです(笑)。
日本のビジネススタイルだと、「社内で検討します」とか「持ち帰ります」とか「難しい問題なのでよく検討しましょう」といって話が進まないことがよくありますが、トランプの場合は暴力的なまでのドリブン圧力で、無理やり会話を進めてくるわけです。
そんなわけで、「全世界相互関税」や「日本製鉄によるUSスチール買収問題」なども、「どうせトランプがカマしてるだけで、最終的には現実的なところに落ち着くんでしょ」と思って、あまり深刻には見ていません。
それよりも怖いのは、一連のトランプの暴力的=ジャイアン的な交渉によって、少なくともアメリカ国家そのものの信用が大きく揺らいだように見える点です。
ここ数年、YouTubeや書籍、ブログなどで「ほったらかし投資」「S&P500だけ買って放置が正解」というような非常に安易な投資情報が氾濫しています。見かけるとなんとなく目は通してしまうんですが、まがりなりにも17年ほどサバイバルしてきた自称投資家の私の感覚からすると、かなり間違った情報が多いように思います。辛辣に書いてしまうと、「理屈を理解せずに結論だけを受け売りでパクってきたアタマ空っぽなもの」が多いんです。そういった情報に引っかかった人たちは、このあと少なからず痛い目を見る局面に入ってくると思います。
世界最強国家・アメリカの“権力の源泉”を考える
ひとつ、皆さんに一緒に考えてほしい問題があります。
「アメリカが現在『世界最強国家』である根本的な理由はなんでしょうか?」
つまり、アメリカの権力の源泉はどこにあるのか、という話です。これを考えていきましょう。
歴史を紐解くと、1900年代前半までは「世界最強国家」は泣く子も黙る大英帝国でした。18世紀(=1700年代中盤)から始まる植民地政策時代に、イギリスは地球上の至るところに領地を作り、現在でもその名残であるイギリス連邦(=コモンウェルス)には56カ国、26億人が参加しています。世界人口の約1/3が「イギリス人または新旧イギリス領の人」という計算です。
では、こんなトンデモナイ規模のイギリスからアメリカへと「世界チャンピオン」が移ったのは、どのタイミングでしょうか?
私の世界観では、始まりは1933年6月の「ロンドン世界経済会議」です。詳しい話は日銀のホームページにレポートがありますので、お時間がある時に読んでみてください。
https://www.boj.or.jp/about/outline/history/hyakunen/data/hyaku4_1_5.pdf
この会議は、1929年に起きた世界恐慌の後片付けに関するものでした。当時は「金本位制」といって「貨幣の価値を金によって裏付ける」という制度が採られていました。中央銀行が「いつでもゴールドと交換しますよ」と宣言することで、各国が勝手に発行している自国通貨の価値を担保していたんですね。ところが、金本位制には致命的な欠点があります。それは、世界恐慌のような超不景気が発生した際に、その対応策として大規模金融緩和=貨幣を刷りまくることができないことです。
ゴールドを担保に貨幣を発行する仕組みなので、裏を返せば国家が保有しているゴールド以上の貨幣は発行できません。そのため、1929年の世界恐慌の際には、その対応策として各国が一時的に金本位制を停止し、大規模な金融緩和を行いました。その復活を議論したのが「ロンドン世界経済会議」です。そして結論として、この会議で金本位制が全面復活することはありませんでした。
各国が金本位制を復活させたり停止したままだったりとグダグダしつつ、ほどなく第二次世界大戦が勃発します。戦争は莫大なお金がかかる大規模公共事業なので、参戦国は戦時債を刷りまくることになります。
世界恐慌と第二次世界大戦のコンボで崩壊した金融体制を立て直すために結ばれたのが、1944年7月に「連合国通貨金融会議」で締結された「ブレトン・ウッズ協定」です。
たぶん中学校の社会科の授業で、皆さん一度は習ったと思います。
ブレトン・ウッズ協定(=ブレトン・ウッズ体制)では、アメリカが世界を代表して金本位制を採り、まずはUSドルにゴールドを担保とした信用を付けます。そして、各国が発行している通貨はこのUSドルと固定レートで交換できるようにします。こうすることで、協定に加盟している全ての国家の通貨は、USドルを経由することで間接的にゴールドの裏付けを得ることができます。
裏を返せば、世界中の通貨の信用はすべてアメリカの保有するゴールドに掛かっているということになります。
つまり「アメリカが世界経済全体の連帯保証人になる」というのがブレトン・ウッズ体制であり、ここでアメリカが世界チャンピオンとしての地位を確立し、イギリスとの立場が逆転したのです。
さらに、1971年8月25日、アメリカが金本位制を放棄(※5)することで、このブレトン・ウッズ体制は終了します。この後、本格的に変動相場制が始まり、リアルタイムに為替レートが変動するようになりますが、大切なのは「ゴールドの裏付けが無くなったのに、それでもみんな通貨を使っている」という事実です。
つまり、「USドル自体はゴールドの担保がなくなっても、そのまま信用がなくならなかった」ということなんですね。
最初の質問に戻りましょう。
「アメリカが現在『世界最強国家』である根本的な理由は何でしょうか?」という問いに対する私なりの答えは、「アメリカには国家としての信用があり、そのアメリカが発行しているUSドルもまた、世界中が信用して使っているから」です。アメリカの権力の源泉は「USドルの信用」にあります。だから、アメリカ以外の国家間の貿易でも支払いはUSドルが使われます。地球上の経済活動のすべてはUSドルの信用の上に成り立っており、USドルこそが世界経済の「血液」そのものです。アメリカに逆らったテロリストや独裁者は、世界中の銀行のUSドル口座を凍結され、結果として経済活動ができなくなります。(※6)
各国の“脱ドル依存”が始まるかも
さて、では現在起きている米トランプ大統領の一連の動きをどう見るかという話です。
ざっくばらんに言えば、米トランプ大統領の一連の「一発ぶちかましてから交渉を始める」「ぶちかましたブラフを直前ですぐ引っ込める」「突然またぶちかましてくる」といった、行き当たりばったりで暴力的な交渉スタイルは、とても信用とは程遠い行為です。ドタキャンしたり、気分屋で発言がコロコロ変わる人は、仕事でもプライベートでも信用できません。特に政治や経済の場合、信用できない人・組織というのは、それだけで特大のリスクになります。 客観的に見て、このリスクにはヘッジが必要です。保険をかけなければ、いつ事故が起きるか怖くて仕方ないですからね。
そんなわけで、おそらくこの後、各国は「信用が落ちたアメリカに対するヘッジ」を行っていくでしょう。短期的に言えば、たとえばEU圏が非EU圏と貿易をする際にUSドルではなくユーロを使うようになったり、アフリカと中国が貿易をする際に人民元を使ったりする、といった「USドルに依存しない」ための動きです。さらに、たとえば日本の自動車産業のようにアメリカへの輸出に大きく依存している業種では、その他の国への販路拡大が急務になるでしょう。 今回の一連の米トランプ大統領のムーブは、ドナルド・トランプという一個人の評価云々の話や、対米貿易額の減少といった話をはるかに飛び越えて、「世界情勢の大前提が変わる」可能性をはらんでいます。
私の個人的なシックス・センスでは、この流れはブレトン・ウッズ協定や第二次ニクソン・ショックと同じレベルの、50年後に歴史の授業に載るような大事件に感じられます。
今後の投資方針:”Hold,but more Carefully.”
では、冒頭に戻りまして、この後の投資方針をどうするかという話です。 今回の流れによってアセットアロケーション(各クラスに対する投資割合)自体を変えるつもりはありません。「日本株33.9%、先進国株41%、新興国株10.1%、金5%、不動産5%、先進国債券5%」でいきます。ただ、全体の投資額は抑えたほうが良いですし、「少し株を減らして先進国債券を増やしたほうがいい」とは思いますが、そんなに大きな変更は不要かなと考えています。
私から皆さんに烏滸がましくもアドバイスできることがあるとすれば、いわゆる「先進国株式」アセットとしてカウントしていた部分について、アメリカ株式に依存しないほうがいいということです。具体的には、S&P500やダウに連動するETFや投資信託は控えめにして、その分、MSCIコクサイ指数など、広く先進国に連動するETFや投資信託にした方がいいでしょう。「いつまでもアメリカが世界最強である保証はない」わけですから、「先進国株式=アメリカ株式」と考えるのではなく、きちんとイギリスやフランス、ドイツ、スイスなどの他の先進国にも分散させておきましょうという理屈です。(※7)
おそらくこの後、「世界経済が好景気で株も爆上げ!」という状況はしばらく訪れないのではないかと思っています。世界経済の上がり目は何かと考えたときに、「ロシア・ウクライナ戦争の終結による小麦やエネルギー燃料の供給量回復」と「中東紛争の沈静化によるホルムズ海峡の安定」くらいしか、パッと思いつきません。もちろん、世界中のインフレが収まれば再び順当に上がりだすでしょうし、本来はかなり近づいていたはずだったのですが、今回の米トランプ大統領のぶちかましで、だいぶ遠くにすっ飛んでいってしまいました。
少なくとも、「いけいけどんどん」で投資に全力ベットするような状況ではありません。もちろん、新NISAの積立投資は続けたほうが良いと思いますし、すでに投資しているNISA枠を売却するような話ではまったくありません。ただ、全体としては、少しずつ投資資金を減らしていく頃合いかなと考えています。
というわけで標語風に書くと”Hold, but more Carefully.”「保持せよ、しかしてより慎重たれ」となります。
そんなわけで、私は世界経済に関しては「悲観的ではないけれども慎重な様子見」というスタンスでいます。
後編では、国内株式についてお話ししようかと思います。経済の話といいつつ、どうしても政治の話になってしまうため、石破第102代内閣総理大臣の悪口ばかりになってしまう可能性もありますが、そのあたりはご愛嬌ということでご容赦ください(笑)。
注釈
- 当時、中国は国内で非常事態宣言的なものが出されていて、工場が強制停止されたり、オフィス街が封鎖されたりしていました。そのため、アニメやグッズがまったく入ってこず、スケジュールも一切不明という大混乱状態でした。
- 間違っていたのは、「コロナが収束する来年(※2021年のこと)中〜後半に株が一旦下がるとは予想しているものの、その後で大掛かりな景気後退局面に入るとは思っていないからです」と書いた点です。実際は半年後ろにズレて、「2022年頭に株価がピークを迎え、その後1年はほぼ下落、2023年から再び上昇を始めた」という展開になりました。時期は多少ズレましたが、方向性は当たっていたので、中間点くらいはもらいたいところです(笑)。
- 2025年4月現在、ニューヨークの一風堂ではラーメン1杯が18ドル=約2,700円する事態になっています。替え玉1玉で3ドル=450円です。替え玉を1つ頼んで、ちょっとトッピングを乗せると、1人4,000円コースです。また、その辺のお店で朝のパンケーキセットを食べると、1人5,000円かかります。日本なら居酒屋の飲み放題コースが頼めちゃう値段で、そんなに豪華でもないモーニングしか食べられません。
- インフレによる物価の高騰が「止まる」だけであって、物価が下がって「元に戻る」わけではないのが注意点です。戻るかどうかは誰にもわかりませんし、インフレの歴史を見ると、大抵の場合は少し下がるだけで、元には戻りません。
- いわゆる「第二次ニクソン・ショック」です。
- 最近は、この経済制裁の抜け道としてビットコインが使われています。「国家権力に依存しない民主的で自由な通貨」という理想を掲げたビットコインが、結果的に「権力欲マックスのヤバい人たちにこそ愛されている」というのは、なんとも皮肉な話です。
- 「いつまでもアメリカが世界最強である保証はない」というのは自明だと思っていましたが、まさかこんなに早くアメリカの信用が揺らぐとは思っていませんでした(笑)。私としては、「いつまでも=自分の老後が始まる30年後も」ぐらいの感覚でした。
ChatGPT大先生による本日のまとめ
要約
コロナ禍における投資戦略を振り返りつつ、トランプ再登場による米国信用低下と世界経済への影響を懸念。今後は米国偏重を避け、慎重かつ分散的な投資方針を維持する考えです。
要点整理
-2025年現在、米国はインフレ再燃懸念とトランプで世界経済が混乱
-トランプの強引な交渉術は「信用低下」を招いている
-米ドルの信用こそがアメリカの覇権の源泉であると分析
-各国が「脱ドル依存」に動き始める可能性を示唆
-米国株への過度な依存を避け、他先進国株への分散を推奨
-投資配分は大きく変更せず、やや債券寄り・慎重姿勢を採る方針
-世界経済の上昇要因は地政学リスクの収束にかかっているとの見方