おはこんばんにちは。きゅうべいです。
トランプ大統領が期待通りに暴れまくってマクロ経済学者が右往左往しまくってる昨今、いかがお過ごしでしょうか(笑)?
正に今のような暴れん坊が出てきた時に、マクロ経済学者の未来予想はどんどん占い染みてきます。そう、短期未来なんて分かるわけ無いですから^^;
そんなのを見ていましたら、ふとタイトルの事を思い出しました。「インデックス投資はベストではないがベターである」「全ての”投資行為”は”安く買って高く売る”という意味でバリュー投資であり、わざわざ”バリュー投資家”という単語を使うのがオカシイ」「アクティビストは自分を天才だと思っている自惚れ屋である」などなど、論争が尽きない両派閥です。
私は以前のエントリー「自己流資産ポートフォリオの組み方」で書いたように土台をインデックスで固めて追加で個別株を買うスタイルです。ただ、やっぱりたまに迷うんですよね。「インデックス一本にしちゃおうかな?」「いやいや個別株のが絶対儲かるし」などなど。
今日はこの議論の根本を掘り下げてみたいと思います。当たり前すぎて皆さん意外と言語化してないような気がしてます^^;
株式価格:ファンダメンタル + 人気
まず大前提です。
株式の価格は「ファンダメンタル的な価格」と「人気」の2つの要素で出来ています。ファンダメンタルというのは日本語では「基礎的事項」と無理やり訳し、そのままずばり「会社の成績」のことです。どのぐらい儲かっているか? 貯金をどのくらいもっているか? 従業員はどのくらいいるか? そこに強い労働組合は無いか? 資産はどのくらいもっているか? 帳簿上の建物の簿価は適切か? などなど。いろいろな成績を元に、「実際にこの会社はどのくらいの利益を生み出す力があるか?」を測定します。これを元に「一株当たり利益(EPS)」を予想し、それを「無リスク金利(貯金とか国債の金利)」など他資産の利率を比較して、妥当な「リスク・プレミアム付きリターン率」で割ることで「ファンダメンタル的に妥当な株価」が割り出されます。
もう一つの要素は「人気」です。それは文字通り会社の人気・期待値という意味もありますし、行動ファイナンス的な意味での「オークション人気」の意味もあります。株式市場は売りたい人と買いたい人が値段を言い合って、それがマッチングできて初めて売買成立しますから、売りたい人と買いたい人の温度間・人気が大切です。みんながイケイケだと値段が上がってバブルになりますし、みんなが株を見るのも嫌になると暴落します。
株式の価格はこの2段構えになっています。
バリュー投資家の言い分
バリュー投資は、上記2段構えの土台部分、つまり「ファンダメンタル」を重視します。
過去の財務諸表や現在の市況を勘案し、その会社に将来性があるのかを予測し、「一株当たり利益」を精度高く予想するのがバリュー投資家のメイン作業です。バリュー投資家は必然的に長期投資になります。「土台部分さえ上がっていけば、2階部分の”人気”が多少上下しても最終的には概ね株価は上がっていくのではないか」というのがバリュー投資家の考え方です。
インデックス投資家の言い分
一方のインデックス投資家は、個別株のファンダメンタルではなく市場全体の成長を信じています。「国/世界は概ね良くなっていくはずだ」という信念で、国や世界全体に分散投資を行おうと考えるわけです。そしてその土台には、「効率的市場仮説」というのがあります。
「効率的市場仮説」というのは、「市場は効率的であり、どのような情報を利用しても、他人あるいは平均よりも高いパフォーマンスを一貫してあげることは不可能である(※wikipediaより引用)」という説です。要は、「世界中の投資家がファンダメンタルを計算しまくってそれを元に投資しているのだから、いまさら自分で計算したってそんなのはもう皆が知ってるよ!」という考え方です。これを発展させて「自分で計算したって意味ないんだから、みんなの計算に乗っかって無難に平均点を貰いに行こう!」というのがインデックス投資の基本戦略です。インデックス投資は経済統計学から発生した手法で、学問的に多く研究・立証されています。
どちらが良いのか=効率的市場仮説が正しいかどうか
「バリュー投資」と「インデックス投資」のどちらが良いかは、「効率的市場仮説」をどこまで信じるかにかかっています。「効率的市場仮説」は、いうなれば「ファンダメンタル原理主義」であり、行動ファイナンス的な要素「人気」をほぼ排除しています。つまり、「投資家全員が合理的な判断ができる」という前提の話なんですね。
インデックス投資は統計学をフル活用するため、「効率的市場仮説」を大前提としています。学校の物理の授業で「速度を求めなさい。ただし空気抵抗は考えないものとします」みたいな感じです。学問ですから、前提で直接研究対象ではない不確定要素を排除しちゃうんです。でも、実際には「空気抵抗」は当然ありますし、「効率的市場仮説」も怪しいです。あくまでもやってるのは感情を持った人間ですからね。イケイケになったりドンよりしたりは普通にあります。「モメンタム効果」といって、上がり始めた株が特に理由もなく上がり続けることが往々にしてあります。例えばこの場合だと、こういう非合理な現象から合理的現象に戻っていく動きを利用して、空売りを仕掛けたりもできます。もっとも、モメンタム効果がいつ切れるかがわからないと担がれますが(笑)。
一方のバリュー投資は、行動ファイナンス的要素によって過少評価された株を探し、それが合理的価格へ戻っていく時のサヤを狙う手法です。ただ、「合理的価格」といっても、それは投資家が勝手に計算した推測に基づいた「合理性」です。だから、それの精度はこれまた怪しいです。たとえば来年の売上予測を3%はずすと、株価予測では1~2%ズレます(笑)。これが「5年後の株価」とか言い出した日には、預言者バリの予測が必要になります。インデックス投資家からすると、この「預言者バリの予測」の部分をもって「そんなのムリに決まってるじゃん。アクティブ投資家はみんな自意識過剰の自惚れ屋」となります(笑)。
もっとも、あくまでも「大儲け」を狙わずにそこそこの利益を狙うだけであればそこまでの精度は要求されません。さらに、ウォーレン・バフェットの様に大株主になって会社の経営に口を出せる立場になれば、その予想を自分で実現させることもできます。このように、バリュー投資は、その投資家の立場や腕が大きく影響を与えます。
つまり、この2者の対立(というほど対立してないですが^^;)の根幹は、「効率的市場仮説を信じるかどうか」にかかっているわけです。信じる場合はその効率性によりかかってインデックス投資をするのが一番ですし、信じない場合はその歪みを見つけてバリュー株へ集中投資して大儲けを狙えます。
ちなみに私は、どっちもそれなりに理にかなっていると思うので、どっちつかずの両刀使いをやっています(笑)。
まとめ
ということで、この2つは相容れないことはまったくありません。バフェットの有名な遺言である「現金の10%を政府短期債で、残り90%はS&P500のインデックスファンドで運用するよう指示しました(超低コスト投信で知られるバンガード社の投信を勧めます)。」というのは、「下手なバリュー投資をやるぐらいならインデックス投資の方が無難だ」という宣言であり、それはつまり彼の「効率的市場仮説は完璧ではないけど概ね正しいんじゃないか(=自分なら歪みを見つけられるけど素人には難しい)」という宣言でもあります。
インデックス投資家はアクティブファンドをその高い手数料を根拠にボロクソに叩きますが(笑)、自分でやる分には取引手数料しかかかりませんからね^^;
ちなみにインデックス投資家にもっとも近いアクティビストは、かの有名なピーター・リンチです。ピーター・リンチはマゼラン・ファンドのマネージャー時代に強烈な銘柄数を保有しており、「ひとりS&P500」状態でした(笑)。運用規模が超巨大だからこそ出来る荒ワザですが、「あきらかに過大評価な株だけを無視して、後は全部買う」という恐ろしい大人買い手法によって、彼は市場平均をぶっちぎりました(笑)。ある意味ではスマートベータETFを時代に先取りして自分で勝手にやっていたと言えるかも知れません。いま個人がやろうとすると「全体をETFで買ってヤバイ銘柄だけ単独空売り」って感じでしょうか? 「ピーター・リンチの株で勝つ(ダイヤモンド社刊)」は名作ですから、是非読んでみてください。
それと、「世の中全てがインデックス投資家になると”会社の適正な価格”を計算する人がいなくなるので株価が歪みまくりインデックス指標が崩壊する」という自家中毒現象も起きます。
そんなわけで、みんないい感じに手法を混ぜて仲良くやれば良いんじゃないかな~と思う、冬の昼下がりです。以上、ラーメン屋の順番待ちの列からお届けいたしました!