2021年夏、いまクレジットカード界隈が熱い

おはこんばんにちは。きゅうべいです。
今日は久々の更新でキャッシュレスの話題です。
皆さんご存知のように2021年8月現在のいま、キャッシュレスのオタク界隈(そんなのがあるのか!?)は話題騒然のお祭り騒ぎとなっています。今日はその話題です。

2020年よりクレジット業界の流れが明らかに変わった

少し遡って2020年初頭、クレジット業界を揺るがす衝撃の展開がありました。

事の発端は業界の老舗、三井住友カードの動向です。

2020年の2月、日本ではじめてVISAと契約して「国際クレジットカード」というサービスそのものを持ちこんだ老舗・三井住友カードが、パルテノン神殿でおなじみのデザインを30数年ぶりに刷新しました。これだけなら見た目だけで別に大した話ではなかったんですが、実はひっそりポイント制度も変えたんですね。それまで三井住友カードでは「ワールドプレゼントポイント」という決済1,000円ごとに1Pが付くというポイント制度で、端数だらけで使いにくく評判がよろしくありませんでした。それをデザイン変更を機に「Vポイント」という200円で1Pの制度に変更します。還元率こそ0.5%ですが、あきらかに使いやすくなりました。

さらにそこから1年、2021年2月には「三井住友ナンバーレスカード」を開始し、標準ランクのカードは年会費無料となりました。これまで三井住友クラシック(通称:ミツズミ一般カード)は年会費1000円ちょい取ってましたが、ナンバーレスを口実に実質無料化した形です。

さらにさらに、2021年7月には「三井住友ゴールドナンバーレス」を開始します。こちらは今までのゴールドカードの保険を少々削る代わりに年会費を5,500円まで落とし、そればかりか年間100万円決済を1回達成するだけで以降年会費永年無料、プラスで年間100万円を達成した年は1万ポイントボーナスというおまけまでつけました。
これは凄まじいインパクトです。年間100万円使う人なら、年会費無料・還元率1.5%で三井住友ゴールドが持てることになりました。

この一連の流れの裏には明らかに三井住友の仮想敵がいます。もちろん、楽天カードとエポスカードです。

楽天とエポス、2大「エブリデイ・カード」

(1) 楽天カードの「与信革命」

楽天カードは言わずとしれた業界最大手の「エブリデイ・カード(=日常使いするクレカ)」です。楽天カードがクレジットカード業界に起こした革命は、「いままでクレジットカードを作れなかったような人にも、とりあえずバラまいちゃえばなんとかなるだろう」という割り切りです。無職や専業主婦のような収入がない人にもとりあえずカードは発行する。最悪与信枠が5万だ10万だとショボくても、とりあえず発行する。それにより貸し倒れ引当金が増えたとしても、「発行枚数を稼ぐための宣伝費」と「楽天経済圏への囲い込み経費」だと思えばなんとかなるという完全に割り切ったビジネスモデルです。もちろんカード事業以外との連携ありきの方針ですが、これによって瞬く間に楽天カードは日本一の発行枚数になりました。

(2) エポスの「ロイヤルティ絶対主義」

一方のエポスを発行するマルイは月賦百貨店をルーツにもつ由緒正しき「金貸し屋」です。創業当時は家電が中心だったと聞きますが、私個人のイメージでは洋服屋の印象が強いです。高校生~新卒社会人ぐらいのあまりお金を持ってない層に、ローン・分割払いで身の丈に合わない洋服を買わせるという、、、まぁアコギな商売です。何を隠そう、私はこのビジネスモデルが大好きでマルイの株を10年以上保有しています。
エポスの場合は、昔からある「赤いカード(※マルイ店舗内限定のローン用ハウスカード)」をVISAブランドにしてクレジットカード化したもので、若いOLさんや学生をメインターゲットに据えており、とにかく「ロイヤルティ(=ブランドへの忠誠心・愛着)」を追求しています。その最たる例がエポスゴールドカードです。

エポスゴールドカードは年会費5,000円で単独発行を受け付けています。でも普通に申し込んで発行している人はほとんどいないんじゃないでしょうか?というのも、通常の年会費無料エポスカードで約30万円~50万円かつ80~100回決済をすると、最短半年ですぐにエポスゴールドカードの無料インビテーションが来るからです。このインビを経由すると、エポスゴールドが年会費永年無料で入手できます。いわゆる「エポス修行」というやつでクレカマニアは条件を狙い撃ちして決済してゲットします。でも実際は、普通のOLさんが普通に日常生活で使っていると気軽にインビがくるぐらいハードルは低いです。水道光熱費や携帯電話代で月に2~3万円の引き落としがあれば追加で毎月数千円使うだけでインビがもらえる計算ですからね。「本当は年会費が5,000円かかるのに招待されると無料で持てる!」というちょっとした優越感と、年間50万円で2500P/年間100万円で10,000Pボーナスプレゼントという楽天カードを超える還元率によって、名実ともに「知る人ぞ知る年会費無料クレジットカードの王」に君臨しています。

私は最近お昼の弁当を会社近くのマルエツやまいばすけっとに買いにいくんですが、OLさんや主婦層はちょっとびっくりするぐらいエポスゴールドで払ってるのを見かけます。下手すればイオンカードより見るかもしれません。(※マルエツもまいばすけっともイオン系列です。)

時代はブランド志向から実用性重視へ

この楽天カードとエポスカードをざっくりと纏めてしまうと、これ要は「実用性重視のエブリデイ・カード」なんですね。いわゆる高級ホテルで部屋をアップグレードしてくれるとか、高級レストランをカードコンシェルジュ経由で予約するとオマケがつくとか、そういったブランド志向・見栄を張るためのカードではありません。純粋にポイントがいっぱいついてお得とか、海外旅行に行くときに空港のカードラウンジでタダ飯が食べられるとか、そういう俗っぽい(笑)細かなオトクを追求したカードです。

三井住友カード流のイマドキ

話を戻すと、従前の三井住友カードは良くも悪くも「古臭くて」「そんな得はしないけどしっかりしてて」「安定感・信頼性のある」カードでした。不正利用の被害にあったらきっちり保証してくれたり、カードを落としたらすぐに対応してくれたり、カードのデザインが無難でどこで使っても悪目立ちしなかったり、そういったごくごく普通のカードです。

ただ、当然そんな戦略ではクレジット業界では生き残れません。

2020年のデザイン変更を境に、三井住友カードは「ポイントが溜まって」「スマホとの連携もきっちりしていて」「今風のデザインで」「若い人も欲しいと思えるような」そんな最新のブランドに生まれ変わりました。

今回登場した三井住友ゴールドナンバーレスに関しては、ポイント制度はエポスゴールド丸パクリ、選べるポイントアップショップもエポスゴールド丸パクり。かつクレジットカードでの投信積立は楽天カードの丸パクり。コンビニでのポイントアップはJCB CARD Wやセゾンパール・アメックスへの牽制。つまり業界内の様々なクレカの特徴をかき集めた「ハイブリッド・パクリカード」です(笑)。

業界最古参の三井住友カードがブランド刷新をしたことのインパクトはそれはそれは凄まじいものです。
メインでエポスゴールドを使っている私も、即決で三井住友ゴールドナンバーレスを発行しました。

ここまでだと単に三井住友カードを褒めちぎって終わってしまうんですが、お祭り騒ぎはここでは終わりません。
ちょうどおとといの2021年8月2日、いままで沈黙を続けていたクレディセゾンが伝説のキャンペーン「セゾンゴールド・アメックス無料配布」を復活させました。

対抗するセゾン

もともと、クレディセゾンは「緑屋(みどりや)」という月賦百貨店でマルイや大丸のライバルでした。セゾンカードもエポスカードと同じく月賦百貨店のローン用カードなんです。ただここ最近はエポスに大きく水を開けられておりクレジットカード業界での存在感はあまりありません。首都圏の中央線・西武線沿線で西友系列のスーパーマーケットを使う人のほぼ専用カードみたいな扱いになってます。地域限定ローカル版のイオンカードって感じでしょうか。特にマルイで買い物をしなくてもポイント還元でメリットがあるエポスゴールドカードと違って、セゾンカードは西友が近くに無い人にとってはほぼメリットがありません。

そんなセゾンカードの唯一最大の武器は「アメックスブランドでセンチュリオンのデザインが使える」という点です。特にクレジットカードマニアからすると、アメックスって一種のあこがれブランドの象徴なんですね。クレカオタク界隈ではセゾンアメックスには「偽雨(=ニセアメ=ニセモノのアメックス)」という愛称(蔑称?)まであります。特にゴールドカードランクのアメックスでそれっぽい券面というと、セゾンゴールド・アメックスしか選択肢はありません。

おととい始まったキャンペーンは、セゾンカードを使っている既存ユーザー向けに「クラッセランク4(※1)だと永年無料(※2)でセゾンゴールド・アメックスが申し込める」というものです。
かつて2019年に2回だけ実施したキャンペーンのリバイバルで、当時「仮にもアメックスのゴールドランクが無料で持てる」とオタク界隈は大騒ぎしました。

※1 セゾンカードにはネット銀行のランク制みたいなものがあります。クラッセランク4は週に数回・毎月2~3万円ぐらい使う日常用途のライトユーザー層です。
※2 厳密には「年間1回のご利用で年会費11,000円が永年無料」です。完全な死蔵は駄目よという緩すぎる条件がつきます。

このタイミングでの突然のキャンペーン復活ということで、これはどう考えても三井住友ゴールドナンバーレスへの牽制です。三井住友ゴールドナンバーレスを年会費永年無料にするためには1回は年間100万円を達成しないといけません。でもセゾンゴールド・アメックスについては、既存ユーザーで普通に一般カード(=セゾンパール・アメックス)を使ってくれてる人にはもうあげちゃいますよと。だからユーザーさんは乗り換えせずに残ってねってな具合です。

このように業界他社からみても、最古参・三井住友カードの方針転換は大きなインパクトがあったということです。

今後に向けて

とまぁそんなわけでクレジットカード業界は久々に活気付いています。ここ数年はなんちゃらペイの話題ばかりになっていましたが、やっぱりキャッシュレスの保守本流はクレジットカードですからね。いまのところ大手イシュアで動きがないのはJCBとイオンですから、個人的には次にこのどちらかが動くのではないかと期待しています。特にJCBについては2017年にJCB CARD Wを発表して以降、音沙汰がありません。2017年当時は還元率を1%にするだけでも大いにインパクトがありましたが、今となってはその他大勢に埋もれてしまっています。JCBが条件付きで年会費無料のプロパーゴールドカードあたりを出してくれば話題沸騰間違い無しですから、ぜひ対抗策に期待したいと思います。

スポンサーリンク






シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク