おはこんばんにちは。きゅうべいです。
今日は久々にガチのデータを使ったエントリーです。
前回アセットアロケーションの説明をした際に、日本株はインデックス投資するよりポートフォリオを組んだ方が良いっていう話をちょろっと書きました。そう。今日は個別株分散が実際に行われる様子をグラフを交えてお届けします。これを見ていただければ自分でポートフォリオが組みたくなること間違いなし!
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まとめるのめっちゃ疲れました(笑)
お約束ですが投資は自己判断・自己責任でお願いします。
分散投資の基本概念:アルファとベータ
まず理論的な話を簡単に復習しましょう。
株価というのは「アルファ」と「ベータ」という2つの部分に分離することができます。
「ベータ」というのはその株が所属するカテゴリー全体に共通する動きのことで、例えば「日本株が上がってる」とか「自動車関連株が強い」とかそういうザックリした全体の動きのことです。カテゴリの総意みたいなものだと思って下さい。すべての銘柄はなにかしらこのベータという土台・お立ち台の上に立っています。
一方の「アルファ」というのはその株式固有の動きのことで、ベータの上に立ってるキャラクターだと思って下さい。土台自体がベータとして上がったり下がったりする中で、さらに個別のアルファ君が上がったり下がったり屈伸運動をしているイメージです(笑)。例えば業績の良し悪しとか、なにか新商品が出たとか、不祥事をやらかしたとか、個別の事情を勘案したその株特有の動きがアルファです。
一般的に株価の額面の中ではベータの割合の方が高いので(急成長株や超割高なテック企業は除きます。GAFAやテスラが代表例です。)、いろんな種類の株を集める=分散投資すると相対的にアルファが誤差レベルにまで小さくなってほぼベータだけが取り出せるようになります。
({ベータ+アルファA}+{ベータ+アルファB}+{ベータ+アルファC})÷3 = ベータ + アルファ(A+B+C)÷3ですからね。
これを利用したのがインデックス投資です。大きなインデックスETFというのは市場全体・何千もの銘柄に分散された指数に連動しますので、これはほぼベータと見なすことができます。ベータのみを組み合わせれば、個別株の事情に左右されずにリスクを抑えた投資ができるというのがインデックス投資の基本理念です。
実際にデータを見てみよう!
では実際にデータを見てみましょう。
今回ベンチマークとして登場してもらうのは、TOPIX ETFの中で一番経費が低い「1475 iシェアーズ・コア TOPIX ETF」です。私も大好きでコア資産&端数調整用にがっつり使ってます。
対象となる資産は、2016年1月から2020年12月1日までの個別株価格データを元に徐々に銘柄を増やしていきます。
足していく個別銘柄については恣意性を排除するために私が思いついた有名所を適当に挙げていきました。分散の仕方としては猿が投げたダーツ状態で超ヘタクソ&最低レベルだと思ってください(笑)。
また、追加の仕方については、1銘柄あたりの投資額がだいたい同じぐらいになるようにします。今回1銘柄目をトヨタ(2016年1月4日時点で100株733,700円)にしたので、追加する株はだいたい70万円分ぐらいになるように300株とか200株とかキリよく倍数にしていきます。
また相対的な動きを見る趣旨ですので、グラフでは2016年1月4日を「100」として値動きを相対化して計算します。
まずはトヨタ1銘柄
日本を代表する銘柄っていったらこれでしょ、ってことでまずはトヨタからスタートです。
思ったよりショボかった(笑)。
なにげに2016年から下がってるんですね。まったく知りませんでした。
これはヤバい。いきなりTOPIXに差を付けられました。
2銘柄目は三菱商事
国破れて三菱あり。「三菱が滅びるとき日本国が滅びる」といわれる旧財閥系最強の会社です。2016年1月4日時点で2000円ぐらいなので、300株追加します。
だいぶTOPIXに近づきました。ご覧のとおりたった2銘柄を合わせただけでもグラフの形がTOPIXに近づいたのが分かると思います。
3銘柄目はイオン
自動車、輸入商社と続いたので、3つ目は内需のイオンです。2016年1月4日時点で1808円なので400株追加します。
2017年の1月ぐらいから2018年の8月ぐらいまではTOPIXより下に離れてますが、それ以外はほぼ一致してるのが見えると思います。適当に選んだだけなのに3銘柄目ではやくも相当近くなりました。
4銘柄目は日本電信電話(NTT)
4つ目は同じく内需から通信の巨人・NTTです。三菱商事じゃないですが、こちらも潰れるイメージがちょっとできないぐらいド鉄板です。途中1:2の株式分割があったので、便宜上2016年の株価を半分にして今の単元基準に合わせて計算しました。2016年1月4日時点で2357円相当なので300株分足します。
さっきよりTOPIXと離れてるようにみえますが、実はそうではありません。一個前のグラフと見比べるとわかりますが、2017年の1月ぐらいから2018年の8月ぐらいまでの下振れが近づいていて、その分2018年8月以降が上振れしています。相対的にはTOPIXグラフの周りをよりウロチョロしだしたってことです。
5銘柄目は住友化学
そろそろパッと浮かぶスーパーメジャーが無くなってきました(笑)。エネルギー系といえば三菱ケミカルか住友化学かなってことで、さっき三菱商事を入れたので今度は住友です。こちらは2016年初で665円なので1000株追加です。
データ見てドン引きしてるんですが(笑)、住友化学って2016年から株価ほぼ半分(665円から385円)になってるんですね。まぁあくまでもポートフォリオの実験なのでヤバいのも入れときましょう。いいサンプルです。
さて、株価が半分になった住友化学を足したにも関わらずグラフはどんどんTOPIXに近づいていっています。グラフ後半の上振れ分がむしろ下がって一致するようになりました(笑)。さらに真ん中あたりの山もよく見ると1個まえより上手くトレースするようになっているのがわかります。尖ってる部分のナマりがとれたといいますか、ちゃんと尖るようになったといいますか。表現が難しいのでご自身の目で見比べてみてください。
6銘柄目はゼンショー
もう5銘柄目でほぼTOPIXと一致してしまいましたが、そういや優待株入れてないなと気付きましてダメ押しでゼンショーです。サラリーマンが大好きなすき家となか卯ですね。2016年初で1486円なので、ここは500株分です。
ゼンショー強すぎ(笑)。グラフとしてはTOPIXから離れましたが、それは上振れだけで、下振れ部分は相当小さくなってるのがわかります。パッとしないトヨタや半値落ち寸前の住友化学が入ってるにも関わらずです。ちなみにゼンショーは1486→2660でほぼ倍になってました。
おまけ
せっかくなので個別株の個々の値動きをグラフにしたものをついでに作りました。
見てすぐ分かるように、個別株の動きというのはラッパのような形で拡散していきます。このグラフを見れば「長期投資でリスクが低減する」というよくある論法が嘘なのが一発でわかります。よくコラムで山崎元さんが「長期投資でリスクが低減するわけ無いだろ!」って怒ってるやつですね。でもこれをルールに則ってポートフォリオとして合成するとTOPIX=ベータに収束するっていうのが面白いところです。
小まとめ
では振り返って合成していく様子を並べて一気に見てみましょう。一枚ずつ銘柄が増えていきます。
最後に乖離率をグラフ化したもの
最後に、銘柄を足すにつれてどのぐらいトピックスに近づいたかを測るために、「(オリジナルポートフォリオ ÷ TOPIX) – 1」の乖離率グラフを作りました。グラフのゼロ基準線がTOPIXでそこからどれだけ乖離したかをパーセンテージで表しています。ゼロに近いところをウロチョロしているほど、よりTOPIXと近い動きをしたことになります。
先程のグラフだとゼンショーを入れたあとは上振れしまくっているように見えましたが、実は乖離率をちゃんとグラフにすると全体を通してはむしろ他よりトピックスに近いというのがおわかりいただけるかと思います。
さて、今回のこの結果から私の個人的な意見を述べたいと思います
結果を受けた個人的意見
5~6銘柄ぐらいでそれなりにTOPIXっぽいポートフォリオになる
今回はグラフィカルに見ていただいたのでわかりやすかったかなと思います。
一般的なファイナンシャル理論では、個別株の分散は3銘柄程度から効果がでて5銘柄でほぼ達成、10銘柄で完璧、それ以上は分散によるリスク低減はそこまで無いと言われています。
理論上はそうなんですが、実際にデータをグラフで出してみてちゃんとなったのでホッとしてます(笑)。
実際に実験をみていただくと、1銘柄→2銘柄で劇的に変化があり、3銘柄でグラフ後半が一致、4銘柄~6銘柄あたりはマイナーチェンジでちょっとずつ改善していってるというのがよくわかります。「そんなこと言ってもホントに適当に選んだの?」と疑問に思われる方は、是非自分でも適当な銘柄を選んで実験してみてください。株価のヒストリカルデータは「株式投資メモ・株価データベース https://kabuoji3.com/」というサイトで公開されておりCSVで落とせますので、表計算ソフトとやる気があれば誰でも計算出来ます。
つまり、実はTOPIXのインデックスETFを買わなくても、類似する動きのポートフォリオは5~6銘柄ぐらいあれば自分で十分に作れるってことなんですね。東証の個別株は1単元でだいたい20万~50万ぐらいですから、100万~200万円あればそれなりのポートフォリオが自前で組めます。
分散さえすれば株主優待の分だけ得
「めんどくさいからTOPIX ETFで良くない?」と思ったそこのあなた!それは大間違いです(断言)。なぜかっていうと、日本株には株主優待があるからです。これほんと不思議なんですけど、日本ってやたらと株主優待がもてはやされますよね。自社商品ならいざ知らず、商品券やクオカードみたいな金券を配るところまであります。これが以外とバカにならないんです。インデックスファンドでは株主優待もへったくれもないですが、個別株なら株主優待がもらえるうえに、大抵の優待は「100株で〇〇を1個、500株で〇〇を2個」みたいに最低単元の方がコスパが良いようになっています。つまり分散投資と物凄く相性がいいんですね。
分散、分散、また分散
分散投資のポイントは、なるべく多様な業種、多様な商売テリトリーを意識することです。上の実験でいえば、「輸出メインの自動車・トヨタ」のあとは「内需スーパーマーケットのイオン」そのあとは「資源系の輸入商社・三菱」で「内需インフラのNTT」。こういった具合に、なるべくバラけるように追加していけば、どんどんTOPIXに近づいていきます。例えば工業機械受注の会社(ファナックとか日本電産とか)ばっかり買ってしまうと、中国がコケたら一斉に巻き添えを食います。でも欧米中心の自動車株だったら、中国がコケても大丈夫です。分散させることで「どこでなにがあってもそれなりに大丈夫」という状態を早めに作ることが大切です。株主優待欲しさに外食チェーンばっかり買ったり、配当金欲しさにホテル・旅行系ばっかり買ってたら、今回のコロナで地獄を見ているはずです。
真面目に企業分析をしたり会社の将来性を考えたうえで10銘柄買って1個でも当たりがあれば、TOPIX ETFなんて簡単にアウトパフォームします。なにせ個別株に信託報酬みたいな維持費はないですからね。逆に上の実験のように半値落ちしそうな住友化学みたいなのを持っていたとしても、実は分散さえちゃんとできてれば全然クリティカルなダメージにはなりません。株価って半分になるにはそれなりの理由がありますが、2倍には期待だけでなったりしますから(笑)。それに経済は発展していってますから、ある程度業態がしっかりしていてきちんと過去5年ぐらい経常利益が伸びている会社を買えばそこまで大損することもありません。日本に住んでいれば日本の流行や世間のニーズは肌感覚でわかりますから、せめて母国の株式ぐらいは自分でポートフォリオを組んでもいいんじゃないかなと思います。
ちなみに、ポイントはとにかく分散することです。分散、分散、また分散。特に個別株投資をスタートするときが一番危険なので、とにかく最初は3銘柄を同じ日に一気に買うのがスタートです。「3銘柄も買う予算無いよ」って方は、インデックス投資信託やインデックスETFでまずは積み立てておいて、溜まったら個別3~4銘柄一気買いで十分です。次に20万たまったら別の株を100株、さらに次は別の。そうやって10銘柄弱ぐらいまで増えれば、あとは再投資なり入れ替えなりで十分回せるようになります。
ぜひ楽しい個別株投資ライフをお楽しみ下さい。